ただのサッカーブログ

世間知らずの人間が書くサッカーを中心とした個人ブログ。2020年からはサッカー以外の事も少しずつ。

「試合に来ないで」と訴える子も…親の「応援ハラスメント」が与える心の傷

2024-02-08 | Weblog

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「試合に来ないで」と訴える子も…親の「応援ハラスメント」が与える心の傷
22/10/17(月) 7:03配信


現代ビジネス


 10月10日はスポーツの日で、運動会や部活・クラブチームでの試合で

にぎやかな声が聞こえた地域も多かったことだろう。しかし、照れ隠しではなく

「試合に来てほしくない」子どもが訴える現状や、親に「応援ハラスメント」の

啓蒙活動を行っているチームもあるという。一体それはどういうことなのか。

長くスポーツを含めた教育の現場を取材し続けているジャーナリストの島沢優子さんがレポートする。

柏のサッカーチームで配布された「応援ハラスメント」啓もうカードの中身

「応援ハラスメント」とは
スポーツの日に行われた「サッカー交流会」。「交流会」とした目的は…

 「スポーツの日」の前日である10月9日。小学1~3年生が出場する

「柏市ミニサッカー交流会」で、応援に訪れた保護者らに、

一枚のカードが配られた。全部で300枚。一人ひとりに手渡したそのカードは、

「ポジティブな応援」と「大人の心得」の二つのメッセージが並ぶ。

デンマークサッカー協会とスイスサッカー協会が以前から取り組む

「応援ハラスメント」の啓もう活動に使用されたカードの文言を引用して作成したそうだ。

 柏ラッセルFC代表で一般社団法人柏市サッカー協会四種委員会副委員長の

小牟田正善さんによると、「柏市秋季ミニサッカー大会」を今年から大会名を

「交流会」に変更した。大会名が「大会」だと大人が

勝利や結果にこだわって子ども達が楽しめないのが理由だ。

 応援席にいる親たちが熱くなり「何やってるんだ!」「今のはシュートだろう!」

「(ボールを)追えよ!」などと強い言葉を浴びせるのは、いわば応援ハラスメントである。

「応援席ハラスメント」とも呼ばれる。日本では、サッカーのみならず、

ミニバスケットボール、小学生バレーボール、少年野球といった

ジュニアスポーツすべてに蔓延るよろしくない文化である。

 強い言葉を浴びる子どもたちは、やがて大人に言われた通りにしかプレーしなくなる。

シュートを外すなどミスをすると、ベンチに座るコーチを通り越して

スタンドにいる自分の親のほうを見る。大人の顔色を気にしながら

プレーをするので楽しくない。やる気が無くなってしまうのだ。

 「カード配布も初めての試みです。少年サッカーの試合で、

大人の怒鳴り声や暴言が行き交うことは珍しいことではありません。

勝たせたい気持ちがついほとばしるのだと思いますが、その何気ない言葉は、

子供の判断を奪ってしまいます。これがひとつの(啓もうの)スタートになればと思います」

 そう説明してくれた小牟田さんによると、交流会では良いプレーに対し、

お母さん達からの拍手が多かった。加えて、「いいぞー!」「ナイスプレー!」

などポジティブな声援も目立ったという。これに対し、何かしらの競技を

部活動などで真剣にやっていたようなお母さんは「ガチな」応援をしがちだ。

ゴール裏で指示をする人には小牟田さんが「ここからの指示は良くないですよ。

子どもはポジティブな応援のほうが喜びますよ」と

笑顔で伝えたら、すんなりと受け入れてくれたという。



「親フーリガン」に苦しむスペインの子の訴え
「応援ハラスメント」は世界共通の問題でもある

 とはいえ、この応援ハラスメントは日本だけの問題ではない。
スペインリーグのビジャレアルに勤務する佐伯夕利子さんが

先ごろSNSにアップしてくださった「CUÁLES SON LAS CARACTERÍSTICAS DE LOS PADRES HOOLIGANS?

 (親フーリガンの特徴とは? )」は、親からのプレッシャーに苦しむ子どもたちの

声を伝える啓もう動画だ。それは、試合前に父親が息子に「人生は戦争だ」

と勝つことを煽る場面から始まり、「1点取ったら5ユーロあげる」と約束する。

 画面には大きな文字で「NO VENGAS」(来ないで)。子どもたちは、例えばこのようなことを親に訴える。

 「もし、試合に勝つことばかり要求するなら、来ないで」
「もし、ジャッジミスだと思うたびにレフェリーを怒鳴るなら、来ないで」
「もし、ぼくがベンチに座っていることが我慢できないのなら、来ないで」
「もし、ぼくがミスをするたびに怒るのなら、ぼくの試合を観に来ないで」

 見ているだけで胸が詰まる。
YouTubeにあげたのはペルーの「UNION PROGRESO FUTBOL CLUB」というサッカークラブだが、

動画自体はスペイン発である。このことから今もって世界的な問題であることを実感する。

 親に限定しないものの、応援マナー向上については欧州は20年以上前から取り組んでいた。
1990年後半にドイツ国立ケルンスポーツ大学大学院へ留学した、

岐阜協立大学の高橋正紀教授(高橋の「たか」は本来ははしご高)は、

選手が人差し指を口に当てて「静かにして」と訴えるポスターが

掲げられていたのを憶えている。同教授は「若干記憶が曖昧ですが、

オランダかベルギーかイギリスに行った際に見たと思う」。

「子どもへのネガティブな声賭けはハラスメントです」
高橋正紀教授が筆者に送ってくれた「フェアプレーのための12ヵ条」

 20年以上前にそんな啓もうポスターがあったことが驚きだ。

そのポスターではないが、高橋教授が研究室に保管していた

「フェアプレーのための12ヵ条」の画像を送ってくださった。

英国のサッカー雑誌「SHOT」の付録だったという。アディダスが

スポンサーになって製作されたと思われるイラストはとてもわかりやすい。

 ここに親に対する警鐘はないものの、11番目に「悪い言葉が存在する場所は、

スポーツの中にはない」と明示されている。高橋教授は「今ある少年サッカーの

応援ハラスメントには、これが一番近いかもしれません」と話す。

 「自分の親以外のチームメイトのお父さん、お母さんから言われるので、

子どもが沈んでしまうと聞きます。子どもへのネガティブな声掛けが

ハラスメントだということを日本の親御さんたちはわかっていません。

自己決定権を奪うわけなので、絶対に良くありません」(高橋教授)

 また、イングランドでは2000年代前半、10代の育成年代の公式戦を

吹いていた審判が、応援に来ていた選手の父親から殴られて

負傷するという事件があった。これ以外でも、親による

応援ハラスメントは問題視されていたため、イングランドサッカー協会は

ピッチサイドにラインを引いたり、応援スタンドとピッチの距離を空けるなど対策を取った。

 当時イングランドでは、不況のため失業率が高まっていた背景があった

と記憶している。リーグ3部でも数千万の年俸を手にするサッカー選手に

子どもを育て上げることは、貧困から抜け出す手段でもあった。

審判のなり手がなくなるなど、大きな課題を抱えていた。



躍進したデンマークで作られた「10ヵ条」
親がいま目の前のプレーに「だけ」意識しないだけでも、きっと応援の仕方は大きく変わってくる

 この親問題に日本で最初に警鐘を鳴らしたのは、恐らくサッカーコーチの池上正さんだと思う。

遡ること12年前の2010年11月。私が企画構成をした池上さん2冊目の著書

『サッカーで子どもがみるみる変わる7つの目標』を出した。

同書の4章にあたる「走れる子に変える」のなかに、

「デンマーク協会の10ヵ条から学ぶ」という見出しで10ヵ条を紹介した。

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1)子どもたちはあなたのものではない

2)子どもたちはサッカーに夢中だ

3)子どもたちはあなたとともにサッカー人生を歩んでいる

4)子どもたちから求められることはあっても、あなたから求めてはいけない

5)あなたの欲望を、子どもたちを介して満たしてはならない

6)アドバイスはしても、あなたの考えを押し付けてはいけない

7)子どもの体を守ること。しかし、子どもたちの魂にまで踏み込んではいけない

8)コーチは子ども心になること。しかし、子どもたちに大人のサッカーをさせてはいけない

9)コーチが子どもたちのサッカー人生をサポートすることは大切だ。しかし、自分で考えさせることが必要だ

10)コーチは子どもを教え、導くことはできる。しかし、勝つことが大切か否かを決めるのは子どもたち自身だ
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 デンマークは1998年W杯フランス大会で初のベスト8。

2010年W杯南アフリカ大会で日本に敗れるなどして予選敗退だったが、

それ以前から上記の10ヵ条を掲げ、カードにして保護者や指導者に配布していた。

その後、2021年欧州選手権ベスト4と躍進を遂げている。

 日本のサッカーはもちろん、すべてのスポーツが、

保護者の熱意やエネルギーに支えられているのは確かだろう。

しかし、そのエネルギーのベクトルをいま一度見直してほしい。

躍起になるのは、目の前の子どもに結果をもたらしたいからだ。

だが、子ども時代の「今」が人生最高点に達する子育てで本当にいいのか。

伸びしろを残すコーチングがあるように、子育ても

親が余裕をもって見守ることであと伸びする。

 この内容は拙書『スポーツ毒親 暴力・性虐待になぜわが子を差し出すのか』(文藝春秋)にも詳しい。

 「今日も勝て」ではなく、「今日も子どもたちに学ばせよう」と常に意識してほしい。

島沢 優子(フリーライター)

 

 

2月7日(水)
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