ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその465-淑女と髭

2020年07月14日 | 邦画
安定した作りで、安心して観える作品。

人間先のことは分からない。
また、人は、人との出会いによって、その運命を大きく変えられることができる。
めぐり逢いとは、それほど人生にとって大事なことなのだ。
人との出会いによって、人は目標を持ち、または、目標を変えたりする。
それがどのような結果になるのか、これまた先の分からぬことで、それ自体人生を面白くする。
今回紹介する映画は「淑女と髭」。
日本の巨匠、小津安二郎監督の名作である。
ストーリーを紹介しておこう。

剣道を趣味とする岡島は、日本男子をそのまま表したような「質実剛健」な男。
彼は伯爵の友人である妹達に、その顔にたたえた見事な口髭、顎髭から、それを馬鹿にされて嫌われている。
ある日岡島は、街中で、不良少女に恐喝されている女性を救う。
名も告げずその場を去ったかれだったが、この出会いが、彼の未来を大きく変えることになる.........

岡島はこの映画の初頭では大学生の設定。
やがて彼は、大学を卒業し、就職することになる。
彼が最初に向かった会社の面接先で、偶然不良から助けた彼女と出会う。
彼女はその会社に勤める社員だったのだ。
そして後日、彼女は岡島のアパートに出向き、衝撃的なことを告げる。
「あなた、お髭を剃った方が良くてよ」
彼女の突然の忠告に、岡島は戸惑うが、次の言葉で彼も決意を決める。
「その髭が原因で、私の会社はあなたを不採用にしました」
そこまで言われてはと、彼は臍を固め髭を剃る。
所がこれが好評で、次に受けた会社には見事合格するし、友人の伯爵家の妹までに恋ごころを持たれてしまう。
ここらあたりを、小津は軽妙かつ丁寧なタッチで、映画を作ってゆく。
安定、安心したその作りに、観ている者は絶対的信頼を持つだろう。
全く小津とは素晴らしい監督で、コメディからシリアスまで完璧な映画を作る。
モノクロからカラーまで、サイレントからトーキーまで。
本作はモノクロ、サイレントであるが、そんなことは全く気にせず観ることができた。
特にラスト近くのシークエンスで、不良少女が善に目覚め、更生してゆくさまは実に見事。サラリと作ってあるが、その内容にコクがあって、この映画の見どころの一つであろう。

やはり小津作品にハズレはないと思わせてくれる、是非観るべき一本であると言えるだろう。
きっと皆さまもその作りの見事さに魅了されると思う。

1931年、日本製作、モノクロ、サイレント、74分、監督:小津安二郎。

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