ダーリン三浦の愛の花園

音楽や映画など徒然なるままに書いてゆきます。

明日のためにその216-ディーパンの闘い

2016年02月27日 | ヨーロッパ映画
内戦が招いた男の悲劇。

現在も各国で、内戦が後をたたない。
内戦は、一般市民を巻き込み、彼らを悲劇のどん底へ突き落とす。
戦争経験者が減る一方の日本では、彼らの悲しみを慮るすべもない。
本日紹介する映画は「ディーパンの闘い」
スリランカ内戦が招いた、悲劇の物語だ。
ストーリーを紹介しておこう。

ディーパンは内戦で妻子を亡くした兵隊。
彼は、現状に嫌気がさし、国を去ろうと決意する。
一方同じスリランカに住む、女性ヤリニは孤児を探して奔走していた。
彼女はようやく、イラヤルと言う少女を見つける。
そして、三人は偽造パスポートを作り、フランスへと逃亡する。
三人は偽りの家族を装い、フランス郊外の集合住宅を住まいとした。
しかし、妻子を亡くしたディーパンは、寂しさから、その偽りの家族の距離を縮めようとする。
一見平穏な居住環境だと思われたが、近所には麻薬の売買をする若者達がたむろしていた。
ある日、ディーパン達の住む近所で、銃声が鳴り響く。
平穏な生活を望んでいた、ディーパンだったが......

物語の設定は、ディーパンがスリランカ少数民族の「タミル族」出身となっている。
よって、前編台詞は「タミル語」である。
タミル語で思い出すのは「インド」ではないだろうか。
インドは多言語国で、タミル語以外にも「ヒンディー語」「ウルドゥ語」など複数の言語がある。
また、タミル語はシンガポールでも公用語として使用されている。
フランス製作の映画であるが、この設定であるため、全編タミル語での会話となっている。
あまり聞き慣れない言葉なので、最初は戸惑うかもしれないが、映画が進むうちに慣れてしまう。
そこが「映画」の良いところでもある。
話がそれたので、本題に戻ろう。
映画はゆったりとした時間の中、カメラが漂うように映像を映し出す。
とてもゆっくりとした時間が、そこにはある。
心地よいリズムを刻む映像には好感が持てる。
特に要所に用いられる「像」の映像は印象的だ。
物語は、この「像」の映像と「フェードアウト」を多用した、省略法で進んでゆく。
ただし、最初の各人物の設定に説明が無い。
これは、しっかりした説明が無いと、その後の展開に必用な要素がたりなくなり、不満が残る。
ただ、独特の映像美を持った映画なので、映画全体としては、良い評価をしてもいいだろう。
しかし、映画の宣伝文句につられて観ると、不満が残ると思う。
映画の宣伝文句については、以前から気になっていたが、観衆の興味を煽るために、過大広告を行なう傾向が多い。
その結果、期待して観たわりには、納得のゆかない映画が多くなってきてる。
映画の広報を担当する者は、もっとしっかりしたパブリシティを行なうべきである。
今回も「愛のため、家族のために闘いの階段を昇ってゆく」と宣伝文句にはあるが、あまりそれに期待しないほうが良いだろう。
映画のラスト、クライマックスについては、実際に映画館に足を運び、この映画を観てもらいたい。
よって、今回はこの件については記載しないことにする。
この作品は昨年の第68回カンヌ映画際で、最高賞の「パルムドール」を受賞している。
この映画が、その賞に値するか否かは、評価が分かれるかもしれない。
公開中の映画なので、この点についての私見は慎みたいと思う。
是非、興味を持たれた方は、この映画を観ることをお勧めする。

2014年、フランス製作、2015年日本公開、カラー、115分、監督: ジャック・オーディアール、第68回カンヌ映画際パルムドール受賞




最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
タミル・イーラム解放の虎 (civil war)
2016-02-27 00:53:08
 今は、”美しい島”の北部を実効支配したタミル族の民兵組織を知る人は少ないと思いますが、とても激しい内戦でした。女性民兵も多くいたと言いますが、今は海外に移住するなどした民兵だったタミル人もいます。日本列島に住んだ人たちもいるようです。”美しい島”の北部のジャングル地帯などは最後の激戦がタミル・イーラム解放の虎民兵とスリランカ政府軍によって行われた地でもあります。
返信する
コメントありがとうございます。 (ダーリン三浦)
2016-02-27 15:18:12
コメントありがとうございます。
本件についてお詳しいのですね。
当方は予備知識なく、映画を観たので、その背景まで知るすべもありませんでした。
詳しいご解説ありがとうございます。
返信する

コメントを投稿