この地球に暮らしているからには知っておきたい最低限の知識を、地球科学の最新の知見に基づいてわかりやすく解説。その仕組みと体系的な理解が得られます
地震や火山、地球変動は「なぜ」「どのように」起きるか?海洋研究開発機構プログラムディレクター、マグマ学者の著者が読み解く
1章 現在の地球の姿
2章 地球を襲った大事件
3章 現在の日本列島の姿
4章 日本列島に起こった大事件
5章 日本地震列島
6章 日本火山列島
7章 リサイクルする地球
「熱の伝わり方」・・・「輻射」「伝導」「対流」
地球の中では、5,000℃の温度差を解消するために、対流現象が起こっています。
そしてこの対流こそが、地震や火山の活動、地球が進化してきた要因の1つなのです。
これまでに地球の中へ最も深く到達したのは、ロシアのコラ半島で行われた超深度掘削。
1970年に約20年かけて12,261mまで掘り進みました。地球の中心まで6,400km
橄欖岩(かんらんがん)・・・宝石名、ペリドット
スピネル・・・英国王冠の中央に光り輝く真紅の宝石、深さ400km
「ペロブスカイト」・・・深さ670km
「ポストペロブスカイト」・・・深さ2,700km
「モンスーン(季節風)」が起きる根本的な原因は、大陸と海洋の「暖まりやすさ」「冷めやすさ」の違い。昼間は熱せられた陸に向かって海風が、夜は冷えた陸から海に向かって陸風が吹くのと同じ原理。例えば日本では、夏に太平洋高気圧から流れ込む南東風、冬にシベリア高気圧から流れ込む北西の風が、モンスーンにあたる。
ヒマラヤの隆起とアジアモンスーン。
この世界の屋根の誕生は、アジア大陸東部にモンスーンを引き起こし、この地域の気候を支配するようになった。このモンスーンの流路に決定的な影響を与えているのが、平均標高5,000m、東西3,500km、南北1,400kmのヒマラヤ山脈・チベット高原。
この「世界の屋根」の発達と隆起によって、アジアモンスーンは大きく東へ流れている。
インド大陸は5,000万年前にアジア大陸に衝突。
しかし、いきなりヒマラヤ山脈が誕生したわけでない。
インドの北からアジア大陸の東の方へ、巨大な断層に沿って押しだされたもの。
この様子は、模擬実験によって見事に再現されている。
2,000万年前になると、ヒマラヤ・チベットの隆起が開始。
1,500万年には、ほぼ現在と同じ高さの巨大高地が存在。
北米プレートは、千島弧~東北日本弧では40~50度の角度で、
伊豆・小笠原孤さらに南のマリアナ弧では、60度からほぼ垂直にマントルに沈み込んでいる。
これに対して、南海トラフから潜り込むフィリピン海プレートの沈み込み角度は約15度。
古いプレートのほうが高角度で潜り込む傾向。
プレートが古くなるということは、プレートができてから時間が経つ、つまり温度が低くなることを意味する。低音になって重くなったプレートは、自重で急角度に沈みこんでいる。
太平洋プレートの年齢は2億年、フィリピン海プレートは、最も新しい部分で1,500万年前。
この年齢の違いが、日本列島周辺のプレート沈み込み角度の変化を引き起こしている重要なファクター。
房総半島沖には、地球で唯一3つの海溝(日本海溝、相模トラフ、伊豆・小笠原海溝)が集まる「三重会合点」が存在する。海溝に隙間をつくるわけにはいかない。
この三重会合点は1,000万年以上安定している。
三重会合点を安定に保つように日本海溝も西に移動。
つまり東北日本は、フィリピン海プレートの影響を受けて日本海溝が移動して、圧縮され続けている。
国土地理院「日本列島の地殻変動」
水平変動と共に活発な上下方向の変動も認められる。
水平圧縮の大きな地域では、概ね沈降が起こっている。
プレートが日本列島を引きずりこんでいると考えられる。
北穂高岳近くの滝谷に露出している深成岩、地下深い所でゆっくり固まってできた岩石。
この滝谷花崗岩はたった200万年前にできたマグマが、80万年前に固まった岩石。
「世界上で最も若い花崗岩」
これほど若い花崗岩が露出するということは、北アルプスの隆起がとても激しかったことを意味する。150万年の間に2,000mも隆起。
この隆起を原因として、北アルプスの地下に滝谷花崗岩のようなマグマが大量に貫入したことが考えられる。実は北アルプスはとても活発なマグマ生成域である。
~~ずたずたの日本列島~~
地殻に働く力は、破壊を起こす。
そして、破壊を伴って地殻の中に生じたズレが「断層」である。断層の中でも、最も新しい地質時代である第四世紀(258万8千年前以降)に活動したものを「活断層」と呼ぶ。
日本列島には、可能性が高いものを含めると、2,000以上の活断層が存在する。
まさに日本列島は、太平洋プレートやフィリピン海プレートの力で、ずたずたにされている。
活断層が動くこと、それは地震そのものです。
私たちは、少なくとも自分の生活する地域ではどこに活断層があるのかを確認しておくことが重要。このことが、地球の営みとしての地震と共存するための第一歩。
国土地理院作成「都市圏活断層図」
産業技術総合研究所「活断層データベース」
「正断層」「逆断層」「横ずれ断層」
中部九州に正断層が密集。この地域は「別府・島原地溝帯」と呼ばれ、ここを境として九州を南北に引き裂くような方向に力が働いている。
東北日本には数多くの逆断層が存在。
奥羽山脈は、逆断層に伴って隆起した山地。
横ずれ断層は西南日本に多い。この原因は、フィリピン海プレートが西南日本に対して斜めに沈み込んでいるため。「中央構造線」と呼ばれる、日本最大の断層系の一部である和歌山県から九州に至る巨大な活断層や、1995年の兵庫南部地震を引き起こした野島断層を含む「六甲・淡路断層帯」などが典型的な「横ずれ断層」である。
《正断層》・・・
断層面に沿って片方の地盤がずり落ちるもの。地殻を引っ張る力が働いた場合に発生。
最も典型的な例は、海嶺などのプレート発散境界に分布する正断層
《逆断層》・・・
この断層は地殻に圧縮力が働いて破壊とずれが起こるもので、片方の地盤がもう一方に対してのし上げるように運動する。
《横ずれ断層》・・・
地殻に圧縮力が働くと、ほぼ垂直な断層面が形成されて、断層面を境に地盤が水平方向に移動する場合がある。
地震は、断層面での破壊とずれに原因がある。つまり、地震は点ではなく面的に発生する。
この面のことを「震源域」と呼ぶ。
これに対して、最初に破壊が起こって、そこから破壊が広がっていった点が「震源」。
沈み込み帯で起きる地震は、発生する場所によって4つのタイプに分類。
「内陸型地震」・・・横ずれと逆断層
原因は、沈み込むプレートの圧縮によって陸側のプレートの中に蓄積された歪みが逆断層や横ずれ断層を引き起こす。このタイプの地震は、多くの場合、震源が20kmより浅い所にあるために、兵庫県南部地震や新潟県中越地震のように、地震動による被害が大きくなる場合がある。
「アウターライズ地震」・・・正断層
海溝の「外側(陸から離れる方向)の隆起帯」の意。
アウターライズと海溝の間では、曲がりに伴ってプレートを引っ張る力が働いて、その結果、正断層が発達する。海溝型地震発生後には、プレートの沈み込みに対する抵抗力が小さくなって、プレートを引っ張る力が大きくなるので、「アウターライズ地震」が発生しやすくなる。
震源が陸から離れているために地震動は小さくても、断層が海底にまで達する場合には巨大津波が発生する可能性がある。1933年、昭和三陸地震。
「海溝型地震」・・・逆断層
東北地方太平洋沖地震・関東地震・南海・東南海・東海地震やチリ地震、スマトラ地震などの超巨大地震など。要点は。沈み込むプレートが陸側のプレートを押し込むことで蓄積した歪みを解消するときに、陸側のプレートが跳ね返ることで逆断層が生じて地震が発生すること。
この地震は深さ20km前後の比較的浅いところで発生することが多い。
「深発地震」・・・正断層
数十キロから場合によっては数百キロの深さにわたって沈み込むプレートの表面付近で発生。
プレートの自重によって生じる引っ張り力によって正断層ができることが原因。
深いところで発生するので被害をもたらすことは稀。1993年釧路沖地震、深さ100kmで発生したにもかかわらず、釧路で震度6を観測。
~~火山の分布~~
地球では、年間25立方kmのマグマが生産されている。
7割が海嶺、2割が沈み込み帯、1割がホットスポット火山で生産されている。
太平洋プレートは地球上で最も古く、従って冷たく重い。
沈み込み帯でマグマの発生を引き起こす水は、沈みこむプレートから供給されるが、沈み込むスピードが速いとそれだけ多量の水がプレートから放出される。その結果マグマの生産率上昇。
「火山前線(フロント)」:火山地帯と非火山地帯の境界
火山前線は、プレートが深さ100kmに達した上に形成される。
==日本列島に起こった大事件==
ドイツの地質学者ナウマン博士
1885年「日本列島の構造と生成について」論文
~日本の最古記録~
●最古の鉱物
富山県黒部市宇奈月地域の花崗岩中のジルコン::37.5億年前
●最古の地層
茨城県常陸太田市長谷町の凝灰岩(日立変成岩)::5.11億年
●最古の岩石
岐阜県加茂郡七宗町の上麻生礫岩(片麻岩)::20.5億
●最古の化石
岐阜県高山市奥飛騨温泉郷のコノドント::4.7億
ж ヤツメウナギのような無顎類の歯の化石
つまり、日本列島(大陸の周囲)は5億年前には、既に沈み込み帯だったことがわかる。
「付加体」には、海洋地殻、チャート、ホットスポット火山の溶岩、珊瑚礁、海溝充填堆積物などの多様な岩石や地層が含まれている。
~日本列島の背骨、花崗岩~
花崗岩はしばしば御影石と呼ばれる。
御影は神戸市東部にある街だが、裏山である六甲山の花崗岩の通称として用いられている。
ж兵庫県神戸市東灘区御影
大阪城の石垣は香川県小豆島の花崗岩
国会議事堂の外壁は広島県倉橋島の花崗岩が使われている。
花崗岩は二酸化ケイ素を70%含むマグマが、地下でゆっくり固まったもの。
しかしこのマグマがどのようにしてできるのかは、いまだよくわかってない。
マグマの源であるマントルが融けると、50%の二酸化ケイ素が含まれる玄武岩質のマグマが作られるが、そこからさらに20%もこの成分を増やして花崗岩マグマを作る巧いプロセスがなかなか見つからない。
日本列島では大きく分けて6回の花崗岩形成ステージがある。
①5億年前
②4億年前
③2億5,000万年前
④1億5,000万年前
⑤1億~7,000万年前
⑥1,500万年前
現在日本で露出する花崗岩は、ほとんどが4番目のステージのもの。
それ以前の花崗岩は、ほとんど侵食されてしまって、砂岩や礫岩としての痕跡を残すだけ。
~現在の日本列島の形を作った事件~
「背弧海盆(はいこかいぼん)」・・・
日本海や四国海盆のように、弧状列島の背後、すなわち海溝と反対側に、盆地上のくぼみがよくできる。このような窪地をいう。
「固定域」「非固定域」
東北地方太平洋沖地震・・・固着域同時連動型の巨大地震
日本では気象庁が独自のマグニチュードを採用して公表している。
通称気象庁マグニチュードMj jはjapanのj
これまでに起こった最大規模の地震は、1960年のチリ地震でM9.5といわれている。
M9超巨大地震のエネルギーは・・・
日本の年間総発電量のおおよそ半分程度
TNT火薬では4億8,000トン::東京ドーム240杯分の火薬を爆発されたときのエネルギー。
これが瞬時に放出される。
「震源域」がずべて同時に動くわけではない!
「震源」から広がる破壊は、断層面を行ったり来たり、複雑に広がっていく。
例えば、東北地方太平洋沖地震の場合は、最初の3秒間で震源付近で緩やかな破壊が始まり、次の40秒間で陸方向に破壊が進行して最大震度7の有感地震を引き起こした。
その後60秒間にわたって海溝に近い方向に向かって巨大な滑りが発生して津波を引き起こした。最後の90秒間でもう一度、陸方向の深部まで破壊が進行して、再び有感地震を引き起こした。このような破壊現象の多様性が超巨大地震海溝型地震の特徴かもしれない。
~地震津波はどのように発生するのか?~
南海トラフおよび東南海・相模トラフで発生した過去の地震からの重要なこと
①東海震源域(御前崎沖)では1854年12月23日のM8.5を最後に167年も間地震が発生していない。(前々回は1707年10月のM8.6)この地域が「地震空白域」と呼ばれる所以。
相当の歪みエネルギーが蓄積している。
②連動が必ずしも厳密に同時には起こらない、場合によっては2年程度の時間のズレもあり得る。3つの震源域がほぼ同時に起きる超巨大地震はもちろんのこと、複数の巨大地震が少し時間をあけて発生することもある。
③南海・東南海・東海連動型地震と「内陸型地震」の関連性。
内陸型地震とは、名古屋・京都・大阪・神戸・岡山を含む内陸部で発生する地震を指す。
内閣府中央防災会議の資料によると、明らかにこれらの海溝型地震と内陸型地震の発生に相関が認められる。
南海・東南海・東海連動型地震:2040年までの発生確率
M8.4 50%以上
M8.1 70%以上
M8.0 90%以上
※ 「今後 30 年間に震度○○以上の揺れに見舞われる確率」が 0.1%、3%、6%、26%であ
ることは、ごく大まかには、それぞれ約 30000 年、約 1000 年、約 500 年、約 100 年に
1回程度震度○○以上の揺れが起こり得ることを意味しています。
地震動予測地図 震度6弱以上 各地のリスク
■ 地震動予測地図には不確実さが含まれています
地震動予測地図は最新の知見に基づいて作成されていますが、使用できるデータには限りがあるため、結果には不確実さが残ります。例えば、地震計が設置されたのは明治以降のたかだか100年少々ですから、近代的観測データがあるのは、これまで地震が起こってきた長い歴史のうちのごくわずかの期間です。また、国内にはまだ活断層調査等が十分でない地域があります。こうした理由から、例えば、現時点では確率が低くても、今後の調査によってこれまで知られていなかった過去の地震や活断層の存在が明らかにされ、確率が上がる可能性があるなど、地震動予測地図には不確実性が含まれます。
温度が370℃以上の熱水は、水と蒸気の両方の性質をもった「超臨界状態」になっている。
このような状態では非常にたくさんの温泉成分が熱水中に溶け込んでいる。
火山性温泉に含まれる食塩は、決して海水からもたらされたものではない。
マグマから分離した水にはもともと食塩が多量に含まれている。
非火山性の有馬温泉の水は、沈みこむフィリピン海プレートからきている。
有馬型の温泉は、湯殿山温泉などある。
正真正銘のホットスポットの数は20くらい。
サモア
クック・オーストラル諸島
ピトケアン諸島
セントヘレナ島(皇帝ネポレオンの流刑の地)など