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なぜ地球だけに陸と海があるのか 地球進化の謎に迫る  巽好幸/著

2021年02月04日 09時40分54秒 | 読書・地理地震


地球は太陽系唯一、陸と海のある惑星だ。秘密のカギはその進化にある。著者らは日本列島の南へ延びる沈み込み帯(伊豆・小笠原・マリアナ弧)での驚きの発見から、新説「海で大陸が生まれる」を打ち立て、地球進化の謎解きに挑む。キーワードはサブダクションファクトリーや反体陸。科学的営みをスリリングに描く。

1 プロローグ―陸惑星地球(地球―大陸をもつ太陽系唯一の惑星
惑星の形成プロセス ほか)
2 大陸地殻―その性質と謎(マグマ発生の基本原理
プレートテクトニクスと海洋地殻のでき方 ほか)
3 プロジェクトIBM―海で生まれる大陸(IBM弧の成り立ち
IBM弧の地殻・マントル構造 ほか)
4 サブダクションファクトリー―その地球進化における役割(サブファクの原材料と製品、その製造工程
サブファクの廃棄物とその行方 ほか)
5 エピローグ―なぜこの惑星は地球なのか?(熱機関としての地球
マントル対流とプレートテクトニクス ほか)

~~IBM弧の成り立ち~~
「富士火山帯」の中で、箱根火山より南に位置するのがIBM弧の火山だ。
これらの火山は、太平洋プレートが、伊豆・小笠原海溝、マリアナ海溝から、フィリピン海プレートの下に潜り込むことによって生みだされる。
IBM弧の西側には、四国海盆、パレスベラ海盆が、
さらに西方にはかつてIBM弧と一体にの島弧をなしていた九州・パラオ海嶺(KPR)が位置する。このKPR弧とIBM弧にはさまれた盆地状の海は「背弧海盆」と呼ばれるものだ。

一方でIBM弧の北端では、伊豆半島は本州の下に沈み込むのではなく、衝突して丹沢山系を盛り上げている。また南海トラフでは、伊豆半島の部分で北へ湾曲している。このように海溝の位置がシフトしているのも、IBM弧が本州に衝突した結果である。

次の課題は、大きな大陸をつくるメカニズムだ。
IBM弧は大切な情報を与えてくれる。IBM弧を載せたフィリピン海プレートは、南海トラフからユーラシアプレートの下へ沈み込んでいる。近未来に海溝型巨大地震の発生が確実である南海・東南海・東海地域では、この沈み込みによって歪みが蓄えられているのだ。
南海トラフを東へたどると、このプレート境界は伊豆半島の北側の陸域へ上陸してしまう。
この「本州・伊豆衝突帯」が。フィリピン海プレートの北進に伴ってIBM弧が本州に衝突している現場である。IBM弧の地殻が四国海盆のそれに比べて軽いために、海溝から潜り込めずに衝突しているのだ。衝突帯にある丹沢山地は、標高こそそれほどではないが、活発な隆起と侵食の結果、急峻な地形が特徴となっている。

最近になって、この丹沢山地をつくる花崗岩は、衝突事件に伴って、IBM弧の地殻が融解してできたことが明らかになりつつある。事の起こりは、丹沢山地をつくる安山岩組成の深成岩に対する年代測定であった。

丹沢岩体を構成するマグマは500万年前、つまりIBM弧の衝突開始よりは明らかに新しい時代につくられたものだった。化学組成も考え合わせると、未成熟な大陸であるIBM弧が衝突する過程で再融解して、丹沢岩体として衝突する島弧地殻を本州地殻にしっかりと接着しているのである。

このような大陸同士の衝突に伴う花崗岩の形成は、5,000万年前に衝突を始めたインド大陸とアジア大陸の接合部では大規模に起こっている。まさに本州・伊豆衝突帯は、衝突・合体に大陸地殻成長の現場なのである。
このような島弧同士の衝突現象は、現在の地球ではめずらしい現象だ。
現在の本州・伊豆衝突帯では、地球創成期の大陸誕生のドラマが再現されているといえるだろう。

IBM弧::伊豆・小笠原・マリアナ弧
南の終点にグアム、北マリアナ諸島には世界大戦での激戦地であったテニアン島、サイパン島


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