1946年の初版以来、数多の歴史家に参照されて今や古典的資料となった、抵抗運動の草創期を語る貴重な証言!地下新聞の発行、逮捕、仏国内の刑務所における拘禁を経て、ヒトラーの徒刑場での抑留、ナチス崩壊を受けた摘発活動に至るまでの反ファシズム闘争の日々を活写する
第1章 第三共和政の最期(一九四〇年六月七日―)
第2章 鉤十字の下のパリ(一九四〇年八月六日―)
第3章 シェルシュ=ミディ刑務所(一九四一年四月十六日―)
第4章 サンテ刑務所(一九四一年八月二十七日―)
第5章 フレーヌ刑務所(一九四一年十二月二十日―)
第6章 雑居房にて(一九四二年二月十九日―)
第7章 徒刑場(一九四二年三月三十一日―)
第8章 「フリックス」レーヨン紡績工場にて(一九四二年七月―)
第9章 第三帝国の没落(十二の仕事、十三の悲惨)(一九四三年八月二十五日―)
第10章 ナチス狩り(一九四五年四月四日―一九四五年六月十一日)
「解放」:リベラシオン
「抵抗」:レジスタンス
験(げん)のいい数字
爪もここまで伸びれば立派な凶器であって、この完成された道具を用いて脱走を真剣に検討している。
「ねえ、女は死刑にはならないのよ。少なくとも今のところはね」
「えっと、わたしは子豚を飼っていたの。ええ、子豚よ。それにわたし、その子豚のことを『ヒトラー』と呼んでいたの。自分の子豚をヒトラーと呼んじゃいけないなんて知らなかったのよ。そういうわけでここに連れてこられたの。それで、次にわたしはどうされてしまうのかしら」
クリスマスの賛美歌を歌うのを乱暴にやめさせる。
自分の部下が不潔なユダヤ人の生誕を記念して歌うとはなんたる破廉恥、
彼は明らかにそう思ったのだ。
「銃殺するなら早くしてもらいたいもんだ、じわじわと飢え死にさせられるのだけは勘弁してほしいよ」
壁から水がしみ出し、凍っている。
とんでもない数のなめくじがいる。
なめくじレースを企画し、壁にある染みや落書きの穴にどのなめくじが一番早く到達するかひとりで賭けるのは、とても気晴らしになる。
昨日、拷問されている男の人の悲鳴を聞いた。
悲鳴が静まると、笑い声、それも下卑た笑い声が聞こえた。
どちらの方がおぞましいのかわからない。笑い声のほうだと思う。
夜、寒さを和らげるために、毛布の端を頭の上まで引っ張り上げ、息をセントラルヒーティングの代わりにする。
1942年4月21日、昨日はヒトラーの誕生日だった。
「ボルシェヴィキはいかに女囚を扱うか」
三日前から、新規に女性たちがどっと「入荷」している。