こんなふうに敷石がつながっているとついついその先をずっと
たどりたくなるものです。それで、特に目立たないところを見る。
これはだいたいのコツで、実際には自分の感覚に注目する。
必ず「ほっ」とする場所が見つかりますよ。
「ホッ」とするだけの魔法「Qure!」(きゅあ)のお話3
セイラーは白くて、表面は大福餅のように柔らかく、頭に目らしい
アーモンド型のくぼみがある。体重も多分僕らと同じぐらいだろう。
最初の数日間、近くに寄ってくると恐かったが、非常に頼りになるし、
慣れてしまえば近くを歩いていてもたいして気にならなくなった。
表面が柔らかいのはきっと危険回避の時、僕らの体を傷つけないためだろう。
「三号君、明日もこんな天気なのかなあ」
「天気予報ぐらい見ておけ!ユウヤ」
セイラーの発声装置から流れる大声は、いつでもダーレン先生の声だ。
バリトンのうっとりするような美声なのだが、とにかく声が大きくて、
この声で怒鳴られると雷で打たれたように全身がしびれる。
だからセイラーの機嫌を出来るだけ損ねないように普段からみんなで気をつけている。
「危なかった。三号!ありがとう」
「どういたしまして」
危うく海に落下しそうだったノエルはセイラーに感謝し、僕の隣に座った。
どういう魔法で生徒の行動を把握するのかわからないが、セイラーに世話になった場合、
ありがとうがないと、その場で説教が始まる。礼儀に厳しいのは分かるが先生が
寝るときぐらいは静かにして欲しい。
「おまえら、この船はなあ、みんなのマザーシップなんだ!」
「今からこの船に諸君を育ててもらうんだ。だが弛んでいると、命を落とすぞ!」