海の夕焼けと違って、山に囲まれた扇状地の夕焼けは真っ赤にならない。
それでも、今日は夕焼けが綺麗だね、とか近所の人と話をするのだ。
今日も写真に指を近づけて、楽なところを探るとこの辺に落ち着きました。
この矢印の練習をしていくとこんなにいいことがあるよと言う習作
「Qure!」6
今日の操舵担当はヒナタとマリア。女子がふたりではどう見ても頼りない。
それでも近くにいるセイラーはなにか命に危険が起きない限り一切手を貸してくれない。
「ノエル、本当にあの2人で大丈夫なのかなあ?」
「意地だけならだれにも負けない二人だけど、今日みたいに海が荒れていると大変だろうな」
巨大な舵輪との格闘なんて、どう考えても女の子のすることではない。
ペリオディック号は建造されて数百年、エンジンは新品だがあとは建造当時のままだからすべてが手動なのだ。
全長約80m 全幅約12mと帆船としては大型なのだが、太平洋の真ん中で嵐に
揉まれていると、池に浮いた葉っぱのほうがまだマシなように思える。
「ねえ、聞こえる?こんなのないよねー!魔法って杖を振って呪文を唱えるだけ
なんじゃないの?こんな訓練となんの関係もないよね!でしょう?」
「そうね、でもマリア、私はね、こんなことでもしていた方が、船酔いで
トイレにこもっているよりまだいいと思う」
「どっちも良くない!最近すっかり腕が太くなっちゃった気がする!」
「四六時中叫んでいるから、声が大きくなったよね!」
船体が波にたたかれる度に女性の体重だと舵輪が暴れるのを防ぐのは大変だ
。交代まであと三十分あまり、セイラーは知らぬ振りだし、風の変化を気にしながらの格闘は続く。
「明日はこの嵐から出られるらしいから、マリア、あと三十分がんばろうね!」
「しゃべってないでしっかり舵輪を支えなさいよ!もう!」