万福寺 大三島のつれづれ

瀬戸内・大三島 万福寺の日記です。
大三島の自然の移ろいと日々の島での生活を綴ります。

黄砂の嵐に想う

2007年05月29日 | Weblog
先日26日(土)は終日強風が吹き、大三島も空がひどい黄砂に覆われました。以前より黄砂が酷くなったのは確かでしょう。黄河の奥地、タクラマカン砂漠、ゴビ砂漠、黄土高原の砂が強風に巻き上げられて日本列島に運ばれて来る自然現象なのですが、私どもにいろんなことを連想させます。
 小学校の少年の頃、黄砂現象を先生から初て説明を受けた時、遙かに遠い中国と云う異域を身近に感じて異常に興奮した思い出があります。
 タクラマカン砂漠の方から飛んで来る砂としたら、天山山脈や崑崙山脈を右に左に見ながら飛来したのでありましょう。その昔、シルクロードをラクダの隊商が行き交っていた頃、天才的経典翻訳師の鳩摩羅什が、竺法護が玄奘三蔵が踏みしめた砂漠の道や山々であった。そのことにフト想いを馳せました。
 あのタクラマカン砂漠、天山の南北道、崑崙の峰々からこの黄砂は来ったもの。。寺の経蔵に納まる大蔵経、一切経もタクラマカン砂漠や天山山脈や崑崙の峰を越えて中国に伝わり、約千年もかかって全てが翻訳されて、そして私たちの国に海路を渡ったものなのです。
 黄砂は大変厄介なものではありますが、古のロマンにひたらしてくれる縁も与えてくれるようです。
 当山の経堂には先代住職と当代とで迎えさせてもらった数種類の大蔵経が蔵されています。『大正新脩大蔵経』88巻(高楠順次郎監修)、『国訳一切経』、『南伝大蔵経』(高楠順次郎翻訳監修)、『梵語仏典』などがあります。これらの膨大な仏教典籍は全て黄砂の故郷を経由しないものはなかったと思います。そのように思いますと黄砂に覆われた空も何んとはなしに懐かしみを覚えるのです。   
 画像は万福寺経堂の『大正新脩大蔵経』の書架。     住職
コメント
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