「湖底の城 9巻」
著者:宮城谷昌光
発行:講談社 2018年
P7-8 に計然と范蠡の問答の話が出てくる
「国を治める基本の方法はなんであろうか」と計然は問い、
「国民の衣食を不足させぬこと、国家の倉廩を満たすこと、このふたつでしょうか」と范蠡は答える。
これに対し、
「それは目標であって、基本ではない。百里先あるいは千里先にある物を獲るためには、歩くのか、馬車に乗るのか、船に乗るのか、それらが基本の方法である」と計然は応じ、さらに続けて、
「目的地に至るために、まず知っておかねばならぬのは、天理と地理だ。大雨になることを予測せずに、船を用意しないででかけるのは、無謀というものだ。川が涸れ、馬が斃れるほどの大旱であれば、歩くしかない。その歳がどのような天候になりやすいか、あらかじめ知っている者と知らない者との差は大きい。地理についても、同様の予備知識が要る。目的地への大小の道を丁寧に調べ、地図を作っておく。近道がかならずしも近道にならず、迂路がかならずしも迂路にならぬことくらい、たれにもわかっているが、間道をふくめたさまざまな道をあらかじめ調べておく者は寡ない」と語る。
地図の必要性について簡潔に述べている。
計然の話は、史記の貨殖列伝 第六十九 に出てくる。但しそこでは表題のとおり経済的な話で国を治める話ではない。とすると、湖底の城の話は作家の創作か。