宮城谷昌光の「公孫龍巻2赤龍編」を読んでいたら、「燕支」とよばれる草があり、その草を使うとあざやかな紅に染まるという話が出てきた。なんでも戦国の七雄の一つである燕には燕支染めという特産品あり、それがえんじ色の起源とのことである。
日本は漢字文化圏であり、中国由来のことばが多いのは当然なのかもしれない。それをさりげなく物語中に差し込むセンスは心憎いばかりである。それにしても氏の小説を読むとさわやかな気分になってくる。気分がすぐれないときの対策として氏の小説をリストに加えておこう。
宮城谷昌光の「公孫龍巻2赤龍編」を読んでいたら、「燕支」とよばれる草があり、その草を使うとあざやかな紅に染まるという話が出てきた。なんでも戦国の七雄の一つである燕には燕支染めという特産品あり、それがえんじ色の起源とのことである。
日本は漢字文化圏であり、中国由来のことばが多いのは当然なのかもしれない。それをさりげなく物語中に差し込むセンスは心憎いばかりである。それにしても氏の小説を読むとさわやかな気分になってくる。気分がすぐれないときの対策として氏の小説をリストに加えておこう。
著者:ナンシー・フォーブス
ベイジル・メイボン
訳者:米沢富美子、米沢恵美
発行:岩波書店 2016
原書名:Faraday, Maxwell, and the electromagnetic field 2014
How two men revolutionized physics
電気に関する物理が神秘に包まれていた18世紀末から19世紀にかけてその謎の解明に活躍したファラデーとマクスウェルの物語。なんでも実験して確認しなければ納得しなかったファラデー。数式で現象を説明することはできなかったが、言葉でうまく表現した。
それを洗練した数式で表現したマクスウェル。ただマクスウェルは単なる理論家ではなく優れた実験家でもあった。
少し話はそれるが、物理学では、素粒子物理でも、ひも理論でも、重力波でも一般大衆向けに数式を使わずに書かれた本が多数出版されている。それらを読むのが私の楽しみでもあるが、最先端の数学を一般向けに解説した書物はほとんど出版されていないように思う。ファラデーのような人が数学でも現れないものであろうか。
非常に心洗われる本であったが、本筋とはあまり関係なく印象に残った点をいくつか。
・マクスウェルは、有名なキャヴェンディッシュ研究所の設立に奔走し、初代所長を務めた。
・マクスウェルは、ケンブリッジのトライポス(卒業試験)で2位であった。トライポスについては、志村五郎が「数学で何が重要か」の中で「悪名高いトライパス」として「イギリスが純粋数学ではある期間後進国であった一つの大きな理由であるらしい。」と書いている。でも天才は何でもできるということか。
・電磁気学の教科書で出てくる4つのマクスウェル方程式は、もともと20の方程式からなり、マクスウェルの死後それを4つにまとめたのはヘヴィサイドとのことである。
題名にある「場の発見」という面での理解はなかなかおぼつかない。P244 に「電気回路では、電線を伝ってエネルギーが流れるのではない。エネルギーは周りの空間を伝って流れ、電線は道案内役を務めるだけだ。」等々の記述があるが、それをマクスウェル方程式から実感を持って理解したいものだ。
宮脇淳子
徳間書店 2019
始皇帝や武帝、元、明、清の何人かの皇帝を取り上げて、漢民族の周辺の民族も含めて広域的な視点から中国の皇帝の事績等について、わかりやすく説明した本。目から鱗のような話がたくさんあった。例えば、
・漢民族の建てた王朝は、現在の中国を除けば、秦、漢、宋、明だけである。その漢民族の範囲も時代とともに変わっている。
・始皇帝は文字を統一したが、発音は統一していない。離れた地域の中国語は外国語のようなもの。
・元寇の主体はモンゴル兵士ではなく、高麗や契丹、女真人だった。
・モンゴルにはチベット仏教の信者が多く、歴史的なつながりが強固
・清の時代の公用語は満州語で、文書は縦書きの表音文字。
・清の最盛期の康熙帝、雍正帝、乾隆帝のうち、雍正帝は目立たないと思っていたが、意外と有能な皇帝だった。
ややもすると中国は周辺諸国に対して圧倒的な力を誇り、歴史的にずっと支配する側にいたようなイメージを持っていたが、周辺異民族が建てた王朝も多く、また、周辺にも、特にユーラシアの草原地帯には強大な帝国がいくつも存在していた。そうした帝国の実態はあまり文書として残されていないせいなのか、印象が極めて薄い。文書に残すこと、記録することが重要ということか。