著者:石村きみ子
発行:国書刊行会 2023
今年のNHK大河ドラマ「光る君へ」を興味深く見ている。
高校生のころから平安時代に関心があって、日本古典文学大系の「大鏡」や「栄花物語」を古書店で購入した。・・・がそのまま積読になって数十年経過した。大河ドラマを契機に「大鏡」を取り出してみたが、さすがに古文はなかなか敷居が高い。そこで講談社学術文庫の「大鏡 全現代語訳」を購入して読み始めた。「大鏡」には紫式部は出てこないので何か良い本はないかと本書を手に取った次第である。
本書では、源氏物語のあらすじと道長、紫式部の現実での姿が交互に書き進められていて、源氏物語の全体像を時代背景の中ですこし理解できたかなと感じた。平安時代は、和歌が貴族の生活の重要な一部をなしており、物語の中でも現実世界でも和歌が重要な役割を演じている。小学生のころ、何の意味もわからず、小倉百人一首をいくつか覚えたものだが、その中の
いにしへの 奈良の都の 八重桜 けふ九重に にほひぬるかな
という歌はとくにスッと頭に入ってきたことを覚えている。その歌が興福寺から中宮彰子に桜の献上があり、通常取り入れ役は紫式部であったが、新参の伊勢大輔に譲り、その時詠んだものだと本書に記載があった。
このようにこれまで断片的な知識として頭の中にあったものが、本書を読むことで相互につながり、当時の貴族に様子が大河ドラマの画面と相まってイメージ化されるように感じた。勝手なイメージかもしれないが。
ドラマでは、道長が権力のトップに立ってしまったので権力闘争という意味での面白さはないが、これから紫式部の中宮彰子のサロンでの活躍が楽しみである。それにしても源氏物語54帖の帖名はなんという美しさであろうか。
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