確認されている中では最高齢だった、アウシュヴィッツ強制収容所の収容者の生き残りだった方が亡くなられたらしい。
あと何名ぐらいご生存なんだろうね。
あんなに気が遠くなるほど膨大な数の人々が容赦なく殺害されていく中で、ガス室行きの決定を逃れ、最後まで劣悪な環境や過酷な強制労働に耐えて生き延びて、晴れて解放されただけでも奇跡的なことなのに、その後何十年もここまで生きてこられたというのは本当にすごいことだと思う。
でもそのうち・・・、あそこでどんな理不尽で凄惨な大虐殺が行われていたか、実際に見て、体験して、自分の言葉で語れる方たちが居なくなってしまう時が来るんだね。
日本だってそうだ。
もう、戦争を実際に体験した世代はそうとう高齢になってきてしまっている。
そのうち、戦争に巻き込まれるということがどんなに悲惨なことなのか、どんな惨たらしいこと、悲しいことを自分のこととして体験することになるのか、伝えられる人が居なくなってしまう・・・。
これは本当に良くない・・・。
日本なんて特に、テレビや新聞とかで他の国みたいに死んでる人を映したり載せたりは絶対にしないし、最近は核家族化もあるし病院で亡くなる方が増えたから、人が死ぬとはどんなことなのか直接見たこともない若い人が多いから、死というものがどんなことなのか実感できない人も多いと思う。
ゲームで育った世代だと、「人は死んでもリセットボタンを押すと戻ってくる」と思ってる小さい子も居たというニュースを聞いて、驚愕したこともある。
そんなことだと、戦争がどれだけ大変なことか想像すらできないくせに、簡単に「戦争すればいい」などと口にする愚かな人々が出てくる。
だから、伝えられる世代が精一杯、平和の大切さ、命の重さ、戦争の愚かさ、手を取り合って協調して生きていくことの必要性を伝えていかないと駄目だ。
今日、この記事を読んで、昔アウシュビッツに行った時のことを思い出した。
その時の旅行記
絶対自分の目で確認したかった強制収容所の痕跡 アウシュビッツ&ビルケナウを訪ねる
実際にこの目で見てきたことは本当ーーーに衝撃的だった。
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映画などで、あの頃どんなことが行われたのか若干は知っているつもりでも、それが「この場所で実際に行われていた紛れもない事実なんだ」、という現実がズシッと体全体に重ーーーく覆いかぶさってくる感じで、とにかくずっと息苦しかった。
全てのものが、あまりにもそのままの状態でそこに残っていたもんだから・・・。
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ただ「ユダヤ人だから」という理由だけで、人々はヨーロッパ中から貨物列車に詰め込まれて、何十時間もかけてこの収容所に送り込まれてきた。
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そして、降りたところで強制労働に就けそうな者だけが選別され残されて、後は全てこのガス室へ詰め込まれて、チクロンの猛毒で殺されてしまったのだ・・・。
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何の罪も無い人々が・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
たった一人の独裁者の狂気のせいで・・・。
彼らの持ち物は全て没収された。
これは集められた彼らの履いていた靴の山。
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これは、彼らから切り取られた髪の毛の山。
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そしてこれは、その髪の毛で織られた布・・・・・・・・・・・・。
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指輪も、眼鏡も、義歯も、義眼も、義足も、金歯も・・・・・・・・・・・、とにかく金目のものは全て集められた。
ナチスは他にも、剥いだ人間の皮膚でスタンドの傘なども作っていた・・・。
収容所内では、当時ナチスが記録用に撮影していた人体実験の映像なども上映していて、そこには他人の皮膚を移植されてしまった人や、お互いの体の一部を縫い付けられて繋がってしまった人々など、本当にむごたらしい実験の結果が映し出されていて、涙が止まらなかった。
人を人と思わないその鬼の所業に心の底からの嫌悪感を覚えた・・・。
生き延びた人々はラッキーだったのかというと、またそこからも地獄で、毎日ろくに食べるものも与えられないまま強制労働につかされていた。
こんな板の上に寝返りをうつスペースもないくらいの多人数が密集してごろ寝させられて、衛生環境も劣悪で伝染病でバタバタと人々が亡くなっていったそうだ。
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ちょっとでも反抗などしようものなら、こんな狭くて4人入れば満員電車のようにぎゅうぎゅう詰めになって座ることもできない立ち牢に詰め込まれて、何日もずっと放置されたり・・・
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独居房で餓死するまで放置されたり・・・、
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この枠に結ばれたロープで、見せしめのために公開で絞首刑にされたりした・・・。
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死ぬのも地獄、生き延びるのも地獄だったと思う・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
死んでからもこれがひどい扱いで・・・。
焼却炉が全然足りないから、山積みにされて野焼き・・・。
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残った灰はこの池に捨てられた・・・。
今でも底をすくえば白い灰と人骨片が出てくるって・・・。
たくさんの言語で書かれた慰霊碑が並んでいた。
ユダヤの皆様は、いろいろな国からここまで連れてこられて、悲しい思いをしたのだなぁ・・・、ととても複雑な気持ちになった。
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こんな狂ったことが、ほんと自分たちが生まれるほんのちょっと前に実際に起こっていたんだ、と実感すると同時に、今現在のこの世界でも、一部の国や地域ではまだまだ独裁者がのさばって、同じように人々に地獄のような生活を強いている事実があることを忘れてはいけないなぁと思うし、なんとかその犠牲者たちを救い出す方法を世界が力を合わせて見つけ出していかないといけないな、と思う。
こんなに戦争の悲惨さ、命の大切さ、暴走する政治の恐ろしさ、実感できる施設もなかなか無いと思う。
ごく普通の一般市民が、ほんの一握りの人々の思惑に有無を言わさず巻き込まれて、それがおかしなことだと分かっていても刃向えなかったり、だんだん洗脳されて自分たちが正しいことをしていると思い込んでしまって、普通の思考ができなくなって取り返しのつかない行動に走ってしまう加害者になり、相手はその被害者になる、それが戦争だよね。
ダメ。絶対ダメ。
みんな修学旅行や体験学習でここに行けばいいのに。
「戦争なんて絶対嫌だ!」と思うようになるから。
このアウシュヴィッツ、現地語でいうところのオシフィエンチムでは、ホテルが見つからなくて、そのへんで客引きしていた見ず知らずのおばあちゃんのおうちで居候させてもらった。
おばあちゃんはポーランド語しか喋らないし、ワタクシはポーランド語は一言たりとも分からないから、すごくもどかしかった。
このおばあちゃんは、この街で、あの強制収容所が稼働している時代を生きて、全てを見てきているのに・・・。
どんな様子だったのか、中で何が行われているのかどこまで知っていたのか、街の人はどう思っていたのか、あの電流の流れる鉄条網をそれでも潜り抜けて逃げ出してきた人々は居なかったのか・・・・・・・・。
あらゆることをとてもとても聞きたかったよ・・・。
あの頃、今みたいな自動翻訳機があったら・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
・・・けど、あの時、それでも何とか何かを聞きたいと思って、英語でおばあちゃんに一生懸命「ナチスのいた当時のことを知りたくて、強制収容所で何があったのか知りたくて、ここまで来たんだ。ナチスのいた頃、ここに居たの?」と聞いたら、分からないであろう英語を理解しようと努力してくれて、ナチスのことを聞いていると分かってくれて、とっても悲しそうな顔をして、首を振りながら「ナチス・・・・・・・。very very bad・・・・・・・・・・・」とだけ答えてくれた。
自分の好奇心だけで、このおばあちゃんに、思い出したくもない忌まわしい古い記憶を掘り起こさせてしまったかな・・・、と非常に申し訳なくて、それ以上はとても聞けなかった・・・。
おばあちゃん、嫌なことを思い出させてしまってゴメンね・・・。
そして、泊めてくれてありがとう。