851『自然と人間の歴史・世界篇』インド経済(2009~2017、多国籍企業下の労働運動)
2011年6月には、インドに進出している日本の多国籍企業ススギの子会社としてのマルチ・スズキで、大規模な労働争議が起こった。その現場はインドのハリヤナ州(北西部にあり、東縁をジャムナ川が流れる、西部はタール砂漠の北東端部にあたる)にあって、マルチ・スズキのマネサール工場という。6月3日、この日行動を起こしたのは、独立系の「マルチ・スズキ労働組合」(MSEU)の結成大会が行われた。
こうなったのには、マルチ・スズキのドラゴン工場においては、既に「企業内組合」としてのMUKUがあった。会社側は、元々その労働組合なら万事に都合がよいと思っていた節がある。そもそも、インドにおいては、企業内に複数の労働組合があるのはめずらしいことではない。
ついては、マネサール工場においても、会社側は「独立系組合や政党と関係する労働組合は、会社として認められない」と考えた。そこで、会社側は新組合の結成を認めず、組合との交渉を突っぱねた。組合のいう劣悪な労働条件の改善に、耳を傾ける気持ちになれなかったのだろう。
翌6月4日には、マネサール工場で働く約3000人がストライキに突入した。その時の工場で働いているインド労働者の構成は、正規従業員が約900人、訓練生約1500人、契約労働者が約1100人であったという。したがって、多くの労働者がストライキに参加したことになろう。
これに応じて、さっそく、ナショナル・センターのインド全国労働組合会議(INTUC)とインド労働者連盟(HMS)とが支援をMSEUに向ける。傘下の組合員を動員して、工場の正門で、デモを行ったりして気勢をあげた。
これがハリヤナ州政府の知るところとなり、同政府は「ストライキ禁止令」発動し、地方裁判所に紛争解決を委ねる。だが、これにより紛争は解決に向かうどころか、紛糾の度合いを増していく。
今度はグラゴン工場のMUKUが連帯を表明して、ストライキを構えるも、州政府が割って入って2時間のストライキは回避となる。
その後のマネサール工場は、労働側(MSEU)と使用者側が互いに譲らず、泥沼化していく。会社側は、労働法に定める、登録労働組合に対しての「誠意ある交渉」に応じなかった。そのため、組合側は態度を一層硬化させ、13日間のストライキを行う。
そして迎えた6月17日、今度はハリヤナ州政府の労働大臣の立ち会いの下、労使の話し合いがもたれる。これが効を奏して、労使協定が結ばれる。この協約には、解雇者の撤回や、組合結成登録の承認も含まれていた。結局のところ、スズキの思惑に従っての、懐柔のたやすいと思われる「御用組合」はできずじまいであった。マネサール工場においては、インドの既存のナショナル・センターと連携した組合づくりを勧めるMSEUによる組織化が実現した。
なお、アジアと、その中のインドの主な労働組合ナショナルセンターから、紹介しておこう。
インドの労働組合組織状況について
「国際労働組合総連合(ITUC)加盟組織一覧」より一部を引用させていただきました。
【オセアニア】 10カ国・地域、10組織(旧ICFTU:10、旧WCL:0、旧非加盟:0)、2,012,569人
【アジア】 17カ国・地域、40組織(旧ICFTU:23、旧WCL:6、旧ICFTU・旧WCL統合:1、旧非加盟:10)、30,751,521人
(2013年11月現在 161カ地域、325組織、175,826,032人)
(続く)
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インドインド労働者連盟(HMS) 5,788,822 ICFTU
〃インド全国労働組合会議(INTUC) 8,200,000 ICFTU
〃女性自営労働者連合(SEWA) 1,351,493 ICFTU
日本日本労働組合総連合会(JTUC-RENGO) 6,615,558 ICFTU
(続く)
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