バタバタしている間に、平成から令和へと年号が変わっている。
おやおや。
そんななか、なんだか過去というくくりに入ってしまいそうな平成から
引っ張り出したのは、アーサー・ランサム。
『ツバメ号とアマゾン号』でおなじみのランサム・サーガだ。
おなじみといっても、「読んだこと、あるぜ」という幸運な人は、どれくらいいるんだろう。
実際は平成どころか、イギリスで出版されたのは1930年だから、90年近く前の物語。
だけど、まだ読んでなくて、ロビンソン・クルーソーや宝島を好きだという人は、
いまからでもぜひ読んでみてほしいと思うのです。
絶対、夢中になるから。
アーサー・ランサムのたぐいまれな才能の一つは、誰かが言ってたけど
「それぞれの手順をことこまかに説明するうまさ」だ。
キャンプをしたことや、ヨットを走らせた経験がなかろうと、まったくかまわない。
ランサムが一から教えてくれる。
テントのつくりかた、張り方。
具合よくテントで寝るためには、何が必要か。
戸外でのお湯の沸かし方。
ヨットの帆走の仕方。
スカルというこぎ方について。
マストを立てるのは艇庫から船を出した後がいい、そうでないとマストがつかえて船を外に出せないから、など。
たとえば、子どもたちが湖を走らせることになるツバメ号の旗をどうやってつくるのか、とか。
★ティティは小さい旗竿を農場にもって帰り、テントのあまりぎれを少し切って、三角形の旗をつくった。
おかあさんが、紙きれにツバメをかいてくれたので、ティティは、もと半ズボンだった青いサージのきれからツバメを切りぬき、切りぬいた型を白い旗の上にのせて、旗に、型そっくりの穴をあけた。
それから、その穴へ青いツバメをあてはめて、すっかり縫いつけた。
それが終わると、青いツバメがとんでいるりっぱな旗ができあがった。
旗はどちら側からもおなじに見えた。(『ツバメ号とアマゾン号』上/岩波少年文庫より引用)
さりげない挿入の文章だけれど、ほう、そうやってつくるのねー、と納得する。
なるほどねぇ…という具合である。
どの箇所でも、ていねいな段取りとかやり方の説明があり、
それらは退屈どころか、いやがおうにも臨場感をあおる。
実際に目の前で見ているように、自分で体験しているように感じさせる。
映像よりもリアル。
海のように広い湖でヨットを帆走させるのだから、スピード感もハンパない。
読者をリアルタイムで冒険に誘ってくれる、とっておきの休暇の物語なのです。
というところで、今日一日もそろそろおしまい。日付が変わりそう。
オヤスミナサイ…、よい夢を!