このところ年度最終の定期に大曲を並べているシティ・フィル、今年も昨年に続いってショスタコヴィッチで交響曲第7番である。その前に置かれたのは、新進気鋭の佐藤晴真をソリストに迎えて、とても珍しいカバレフスキーのチェロ協奏曲第一番ト長調。佐藤のチェロは惚れ惚れするような美音で、滑らかな弓捌きが実に鮮やか。ロシア民謡をフューチャーした曲の楽しさを十二分に引き出した佳演だったと思う。アンコールのバッハの無伴奏も実に素直な美しい演奏だった。これからの活躍を期待したい。メインの交響曲はナチス・ドイツのレニングラード侵攻中に作曲が開始され、国威発揚的な扱いを受けた曲であることが有名だが、今回の高関の演奏はそんなことを脇に置いた理性的なコントロール下の純音楽的な解釈だったと言ったら良いだろうか。そこには力づくの咆吼も涙の感傷もなく、スコアを考え抜いて音にしたという感じだった。しかし学者的な真向臭さは一切ないのが良かった。「戦争の主題」の高揚や最後の「人間の主題」の回帰の迫力は並大抵なものではなく、そこから聞かれたのはショスタコの筆致に導かれた凛とした音楽の立派さだった。このところ実力をつけてきたシティ・フィルも力の限りを尽くした演奏だったが、力づくでないので音楽が決して汚くならず、思わず襟を正したくなるような格調の高さを滲ませた。シティ・フィルはこれで充実の2023年シーズンを閉じるわけだが、プログラム上で公知された首席フルート奏者竹山愛の退団は実に残念である。これにより、このオケの数々の美演を支えた鉄壁の木管アンサンブルがどう変容するのだろうか。
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