ことわざ かっかそうよう
諺の効力!隔靴掻痒
日本語学者 金田一 秀穂(杏林大学教授) が、諺について書いております。
人がコミュニケーションを取る際、大事なツールの一つと言われている言葉は、
実際にはそれほど大きな役割を果たしていない、という見方があります。
たとえば、一言で「うれしい」と表現する場合でも、ここの状況に応じて様々な
「うれしさ」があり、その言葉だけでは的確に言い表すことのできない、すきまが
生じます。
実はことわざには、そのすきまを埋め、細かいニュアンスを的確に伝えてくれる、
という効力があるのです。
かっかそうよう
「隔靴掻痒」ということわざがあります。このことわざを聞く度に、私は靴の上から
水虫でかゆい足をかくことを想像します。なんともどかしいことでしょう。
そうそう、まさにそうだね、と思うのです。
ごい
子どもや若者の語彙不足が指摘されることがあります。私は決して語彙は不足して
いないと思います。
年配の人が知らない言葉を彼らは知っています。知っている言葉が違うだけです。
ただ、あまりにもことわざに接する機会が少なすぎます。ことわざはやはり身に
つけておいた方がよい、知っていることで、豊かな心持ちで生きていけます。
まずは、楽しんで学んで欲しい。それと、覚える際にはぜひ声を出して読んで
いただきたい。声に出してみることで、言葉が生き生きとしてくる。
本来言葉が持っているリズムを会得することが出来るはずです。
2009年 3月15日 讀賣新聞 36頁
※隔靴掻痒(かっかそうよう)靴の外部から足のかゆい所をかくように、はがゆく、
もどかしいことをいう。靴を隔てて痒(かゆ)きを掻く。[詩話総亀]