Amazonで注文していたDVDはすぐに届きました。実はブルーレイを購入したのは今回が初めてです。初ブルーレイが「シベールの日曜日」とは・・・ちょっぴり嬉しかったりします。
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この映画は古い作品です。50年以上前の作品になりますが、いま観ても大きな感動を与えてくれる、わたしにとって大切な作品です。
モノクロの映像が美しく(BR-DVDでは少しデジタル臭くなっていますが)、どのように撮影したのか、撮影意図などを考えるのも楽しいです。日曜日、ピエールが修道院の学校を訪れたとき、ミラー越しの映像を使ったシーンには度肝を抜かれた思いがしました。風見鶏のある教会の屋根から俯瞰して撮影しているシーンでも、煙突から出ている煙に味わいがありますね。
#照明の当て方も考えさせられました
控えめで詩的な台詞、静寂の中で淡々とお話が進んでいきます。展開される世界は極めて純粋かつ透明で美しく、そしてこころの通い方に優しさが満ちていて温かいです。しかし同時にどことなく漂う哀しい香りがあり、作品に深みを与えています。
静かで美しい映像に二人の心象心理が描写されていて、観ていて引き込まれてしまいます。水面の波紋、凍りついた水面、霧、クリスマスツリーの小さな箱、そのすべてが台詞以上に多くのことを語りかけてきます。波紋(水の輪)が二人の家というところも好きですし、波紋を見ていると「物語」の始まりを告げる画面効果のユラユラにも感じられます。あの美しい公園(?)は今もあるのでしょうか。
カルロスの鳥かごも象徴的です。鳥かごという閉ざされた世界とピエールの心理、完成した鳥かごの中にいるピエールに向かって「北斎のようだ」という言葉を投げかけたりします。カルロスの部屋は窓ガラスが曇っていないのも気になりました。
他にも、回転木馬前のシーンでは「馬」と「鶏」が正面に来て止まったり、ゴーカートの車体には「13」の番号が振ってあったりします。「馬」と「鶏」は、シベールが気になっている白馬と風見鶏なのかもしれません。
音楽も素敵な使い方をしています。ピチカートで主題の旋律が繰り返されますが、適度な緊張感が漂い、作品に張りを与えています。中でもアルビノーニ「アダージョ」が流れるシーンは一番好きですね。純粋な二人の関係とその後の結末を暗示しているかのようで、なぜかウルウルきます。アダージョの旋律が壊れかけた二人のこころの共鳴音にも聞こえ、聴きなれた曲なのに楽曲に対する印象を大きく変えられてしまいました。
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ほぼ20数年ぶりに「シベールの日曜日」を観ました。以前に観たときと同様に感動しまくりでしたが、より深く、より悲しく、感情を揺さぶられた気がします。「triste」なのです。美しいモノクロの映像がより感動を引き立てています。
#わたしはモノクロ写真が好きですしネ
台詞の細かい表現を気にしないのなら、日本語の字幕なんて必要ないかもしれません。「こころ」で感じる映画ではないでしょうか・・・それほど自然に入り込むことができた映画です。
シベールを演じたパトリシア・ゴッジはとても愛らしく、「少女」でありながら「女」でもあるという役柄をうまく演じていました。表情の豊かさが良いです。学校の前のベンチで独り座り、寂しそうな表情を浮かべている姿は強烈なインパクトを与えられ、わたしは忘れることができません。ツリーの小さな箱を取るよう促す視線、本当の名前を告げる表情、いずれも美しい世界を印象深く演じています。「シベール」という彼女の本当の名前は、彼女の失われたidentityであり、それを開示することの意味深さ・重さ、そして再び失われたときの深い悲しみ、久々に震えるほど感動しました。
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わたしはこの作品が好きでたまりません。
これからも繰り返し繰り返し~観ると思います。
ずっとこのまま二人をそっとしていてあげたかった・・・
ふと、そう思いました。
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おまけ
大好きな番組「Chiquititas」「Carinha de Anjo」は孤児院だったり寄宿学校だったり・・・これらは「シベールの日曜日」とは全く別種類の作品ですし、シベールほど悲しい展開ではないものの、どこか似たような風情を感じています。シベールに再会した後、これらブラジルの作品に接すると、シベールのことを思い出すかもしれませんね。
![]() | シベールの日曜日 ブルーレイ [Blu-ray] |
クリエーター情報なし | |
角川書店 |
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この映画は古い作品です。50年以上前の作品になりますが、いま観ても大きな感動を与えてくれる、わたしにとって大切な作品です。
モノクロの映像が美しく(BR-DVDでは少しデジタル臭くなっていますが)、どのように撮影したのか、撮影意図などを考えるのも楽しいです。日曜日、ピエールが修道院の学校を訪れたとき、ミラー越しの映像を使ったシーンには度肝を抜かれた思いがしました。風見鶏のある教会の屋根から俯瞰して撮影しているシーンでも、煙突から出ている煙に味わいがありますね。
#照明の当て方も考えさせられました
控えめで詩的な台詞、静寂の中で淡々とお話が進んでいきます。展開される世界は極めて純粋かつ透明で美しく、そしてこころの通い方に優しさが満ちていて温かいです。しかし同時にどことなく漂う哀しい香りがあり、作品に深みを与えています。
静かで美しい映像に二人の心象心理が描写されていて、観ていて引き込まれてしまいます。水面の波紋、凍りついた水面、霧、クリスマスツリーの小さな箱、そのすべてが台詞以上に多くのことを語りかけてきます。波紋(水の輪)が二人の家というところも好きですし、波紋を見ていると「物語」の始まりを告げる画面効果のユラユラにも感じられます。あの美しい公園(?)は今もあるのでしょうか。
カルロスの鳥かごも象徴的です。鳥かごという閉ざされた世界とピエールの心理、完成した鳥かごの中にいるピエールに向かって「北斎のようだ」という言葉を投げかけたりします。カルロスの部屋は窓ガラスが曇っていないのも気になりました。
他にも、回転木馬前のシーンでは「馬」と「鶏」が正面に来て止まったり、ゴーカートの車体には「13」の番号が振ってあったりします。「馬」と「鶏」は、シベールが気になっている白馬と風見鶏なのかもしれません。
音楽も素敵な使い方をしています。ピチカートで主題の旋律が繰り返されますが、適度な緊張感が漂い、作品に張りを与えています。中でもアルビノーニ「アダージョ」が流れるシーンは一番好きですね。純粋な二人の関係とその後の結末を暗示しているかのようで、なぜかウルウルきます。アダージョの旋律が壊れかけた二人のこころの共鳴音にも聞こえ、聴きなれた曲なのに楽曲に対する印象を大きく変えられてしまいました。
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ほぼ20数年ぶりに「シベールの日曜日」を観ました。以前に観たときと同様に感動しまくりでしたが、より深く、より悲しく、感情を揺さぶられた気がします。「triste」なのです。美しいモノクロの映像がより感動を引き立てています。
#わたしはモノクロ写真が好きですしネ
台詞の細かい表現を気にしないのなら、日本語の字幕なんて必要ないかもしれません。「こころ」で感じる映画ではないでしょうか・・・それほど自然に入り込むことができた映画です。
シベールを演じたパトリシア・ゴッジはとても愛らしく、「少女」でありながら「女」でもあるという役柄をうまく演じていました。表情の豊かさが良いです。学校の前のベンチで独り座り、寂しそうな表情を浮かべている姿は強烈なインパクトを与えられ、わたしは忘れることができません。ツリーの小さな箱を取るよう促す視線、本当の名前を告げる表情、いずれも美しい世界を印象深く演じています。「シベール」という彼女の本当の名前は、彼女の失われたidentityであり、それを開示することの意味深さ・重さ、そして再び失われたときの深い悲しみ、久々に震えるほど感動しました。
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わたしはこの作品が好きでたまりません。
これからも繰り返し繰り返し~観ると思います。
ずっとこのまま二人をそっとしていてあげたかった・・・
ふと、そう思いました。
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おまけ
大好きな番組「Chiquititas」「Carinha de Anjo」は孤児院だったり寄宿学校だったり・・・これらは「シベールの日曜日」とは全く別種類の作品ですし、シベールほど悲しい展開ではないものの、どこか似たような風情を感じています。シベールに再会した後、これらブラジルの作品に接すると、シベールのことを思い出すかもしれませんね。