くるりぴょん、くるりこぴょん

忘れっぽいわたしのための記録。何年か先に、振り返ることのできる思い出を貯めるために。

ビニール越しの面会

2020-07-13 07:34:35 | お母さん
知り合いのお母さんが入居している施設では、予約制で月に2回まで30分の面会できるというので、うちはどうなのだろうと電話で問い合わせをしてみた。

「そういうのやってます」

そういうの、やってるんだ。そういうのは、問い合わせをしないとそっちからは連絡くれないのね。

面会時間は15分とのこと。知り合いのところより15分も短いな。

予約して弟Aくんと行ってみた。入居者用のエレベーターの前に椅子が1つ置かれて、その椅子をコの字型に2面をパーティション、1面をビニールシートで囲んでいた。

お母さんと一緒に食べようとおやつを買ってきたけれど、これじゃ無理だ。想像していたのと全然違ってて、留置場の面会みたいだった。

お母さんが施設の女性スタッフに伴われて、シルバーカーを押しながらやって来た。わたしたちの顔を見るなり、「二人揃ってどうした?」「なんだ、この囲いは」と。

安否確認だというと笑っていた。

お母さんはコロナ騒動を知らないようだ。聞いてもすぐに抜けていくから仕方ない。
世の中大変なことになっている、志村けんも岡江久美子も死んじゃったんだよと話しても、興味はなさそうだった。

それよりも弟Aくんがきちんと食事を摂っているとか、ミルキーは元気かとか、アメリカのおばちゃんは生きているのかとか、そんなことを心配していた。それぞれ3セットは質問&回答を繰り返した。

この蒸し暑い季節に、暑がりだったお母さんが薄手だけれど長袖を着ているので暑くないのか聞いたら、ちょうどいいと。空調管理されているし、おばあちゃんだし、当たり前か。スタッフの人は全員半袖ユニフォームだったけど。

おやつなしの15分はあっという間でもなかった。面と向かうと話すこともそんなになくて。とりあえずは、お母さんが顔色もよく元気そうだったので安心した。新しい施設にすぐに慣れたことは入居後すぐに弟Yが眼科の付添に行った時に教えてくれていた。

スタッフの女性がそろそろお時間ですと迎えに来ると、お母さんも寂しそうだし、わたしもなんとなく寂しい気持ちになった。また来るねと言うと、転んだら自分で起きろよ、バハハーイ!と言って普段通りにあっさりとエレベーターに入っていった。多分、わたしたちに会ったことは部屋に着くまでに忘れちゃう。それでも、また会いに行こう。近いうちに。

今回はお母さん単独撮影。足も組めるようになっちゃって、随分と痩せた。日々の食事コントロールってすごい。




お母さん、特養へ引越す

2020-05-30 22:51:00 | お母さん
「この子は長女、今月11日がお誕生日。あの子は長男、2月3日が誕生日。もう1人末っ子がいるけど今日はいなくて1人は死んだ」

お母さんは施設のスタッフさんを相手によく喋る。

「どうもお世話になりました。死ぬまで生きています。転んだら自分で起きてね。さよーならー!」

ケアマネさんをはじめスタッフの方々に見送られて7ヶ月お世話になった老健(介護老人保健施設)を後にして特養(特別養護老人ホーム)へ移る。

段ボール2つがお母さんの荷物、全財産。着替え5組下着にパジャマ、外履きと室内履きの靴2足、洗面用具。それだけ。

老健はたまに薬の飲ませ忘れはあったけれど、他に何かあったかというとそれくらいで、わたしも弟も気に入っていた。

リハビリのお陰で自主的に寝てばかりいたお母さんを同室のおばさま方と長時間テーブルを囲みお喋りに興じるまでにしてもらえた。

リハビリの先生にお礼を言えば、リハビリの時間はほんの少しの間だけで多くは介護スタッフが連携してくれているからだと言う。介護スタッフの方にお礼を言えば、お母さんがリハビリを頑張っているからだと言う。お母さんにリハビリ頑張ってるの?と聞けば、別に、やれと言われるからやっているだけだと言う。元に戻っちゃった(^^;)

ずっと置いてもらえるならここに居させてもらいたかったけれど、そうはいかない。老健は自宅復帰を目指す施設。

老健に来る前にお世話になった通所介護施設もお母さんに良くしてくれたけれど、ここの老健施設も良くしてくれた。今度のところはどうかな?

コロナウィルス感染予防策ということでお母さんとは玄関ホールでお別れ。体温、血圧を測ったらそのままスタッフさんに連れられてエレベーターまですたすたと歩く。

「くるり、ご苦労。Y、ご苦労。じゃあ!」

ショートロングステイ先や老健に入るときもそうだったけれど、こちらが拍子抜けするくらいあっさりとしたものだった。お母さんなりに気を遣っているのか本当になんとも思わないのかはわからない。

入所契約は途中わたしが口を挟んだこともあり、まるまる2時間かかった。かなり疲れた。冷房が効いて冷え冷えのところだったので寒さに耐えての契約。うちのお母さんをどうぞよろしく。




契約をした地域交流の為のた目的ホール。この春オープンした施設はやっぱりおしゃれだ。

ミラクルが起きた

2020-05-26 09:14:00 | お母さん
なんと、ミラクルが起きた。27人待ちをしていた特別養護老人ホームに入居できることになった。そんなことって、ある?いやはや、びっくり。

弟Yから電話。

「姉ちゃん、○○の杜から電話があったよ、入れるって」

「面会自由になったの?」(老健と勘違いした)

「違うよ、入居」

「はぁ?○○の杜ってなんだっけ?」

「特養だよ、申し込んでた」

「あーあーあー!なんで入れるの?27人待ちだったじゃん」

「みんな入居辞退しちゃって、順番回ってきたみたい」

○○の杜は今年4月に新規オープンしたばかりの120人入居できる大型の特別養護老人ホーム。最近流行りのユニット型ではなく、今時分の新規設立では珍しい多床型施設でユニット型と比べるとかなりリーズナブル。ゆえに競争率は高い。

新しいということは実績がないということで不安がないわけではなかったけれど、とにかく立地がよかった。わたしの自宅からも近くなるし、ひ県立美術館と大きな公園に隣接していて最寄り駅からも徒歩15分程度。車を運転しないわたしにはありがたい。

ケアマネさんからも特養は新規オープンが狙い目とアドバイスをもらって申し込んでいたのだけれど審査の結果は落選。

待てば27番目に入れますよという通知は受け取っていたけれど、入居している人が施設を気に入らず出ていくか、極楽浄土へ旅立つか、順番待ちの上位の人が他へ移るかしないと順番は回ってこない。

当分無理なので他を当たらなくちゃいけなかったのだけれど、コロナ騒動でどこも施設見学お断り。

お母さんが老健でうまくやれていて、老健のケアマネさんもゆっくり探せばいいと言ってくれていたので、正直なところ特養探しはさぼっていたところへこの朗報。

「お母さんは明るいし楽しい人だから入っていただきたいけれど、介護度の高い人が優先になるので、要介護3では微妙です。それにお母さんは書類上は3だけど今の段階で認定したら2くらいですかねぇ、難しいですねぇ」

こんな言われ方をしていたのにあちらも商売だ。満床にならなければ資金繰りがね。わかります、わかりますよ。うちを特別扱いしてくれたわけではなく繰り上がって繰り上がっての入所確定。きっとコロナのお陰だ。嬉しいは嬉しい。

が、しかし。そうは問屋が卸さないような気もする。特養の入居基準から外れたら追い出されないのかな?うちのお母さんは骨折をしたから要介護3で入居基準をクリアしたけれど、要介護2になったら?介護度の認定は年に1回行われる。

弟Yは、ここは乗るしかないだろうと言う。そうなんだけどさ。こちらはお願いして入れてもらう弱い立場。なんとなく、なんとなく手放しで喜べない。いろいろ心配だ。


お水を頻繁にやらなくても健気に育つのでわたしに忘れられがちなゼラニウム2種とアイビー。鉢植えの置き場所もこんなところでぞんざいに扱われているのにゼラニウムは可愛い赤い花をつけていた。

アイビーはパラダイスという品種で本当は葉っぱの縁がフリフリのフリルで可愛いのだけれど、先祖返りをしたのかふつーのアイビーになってしまった。ネーミングと形が好きだったんだけどな。パラダイス・・・良い響き。 




親は親

2020-05-10 23:00:48 | お母さん
ミルキーの周りに6年前に死んだわたしのお父さん、ミルキーのじいじがよく現れるらしい。最近も音がしたという。変な音=じいじ出現ということになっている。

わたし:「最近またミルキーの周りにお父さん来てるらしいよ」

弟Aくん:「そういえば、この間お母さん出たんだよ」

わたし:「出た?この間って、いつよ」

弟Aくん:「出たんだよっていうか来たんだよ。先月かなぁ・・・夜金縛りにあって、やばいやばいって思ったらお母さんが部屋に立っててさ」

わたし:「うわ、こわっ」

弟Aくん:「怖いよ、で、俺は1人でも大丈夫だから!って言ったら、そうかって言って消えた

わたし:「ふーん」

弟Y:「でも、母ちゃん生きてるじゃん、生き霊!?怖い怖い!」

わたし:「えー?Aくんのこと心配なんじゃないの?」

弟Aくん:「そのときは眠かったし恐くなかったんだけど、朝起きたら恐くなってさ。お母さん、その時間に死んだのかと思ったけど、どこからも連絡なかったからよかったよ」

弟Y:「やっぱ生き霊だよ、怖い怖い」

お母さんは末っ子で独身、去年の夏まで同居していたAくんの、特にご飯をいつも心配していた。認知症になり、食事の支度を全くしなくなって(できなくなって)も、Aくんの食事のことばかり気にしていた。ボケても親は親だ。大きくなった子供を心配し続ける。

外食やお総菜で済ませていたAくんも、今はクックパッドがお友達。この休みは豚ひき肉と牛豚の合挽きを買い込み、餃子とハンバーグを作り続けていたらしい。ちょっと前はカレー蕎麦を作り続けてミルキーもご馳走になっている。美味しかったそうだ。

お母さん、そんなに心配しなくても大丈夫。Aくんはここ数年でお料理のできる男子になってるから。


香りに誘われて見つけた、ハゴロモジャスミン。いつの間にかそんな季節だ。明日はわたしのお誕生日。お母さんが初めてお母さんになった日ですよー♪






お母さん

2020-05-09 23:50:00 | お母さん
2月初めの受診から3ヶ月空いての診察だった。病院脇の車寄せにコロナ感染者の受け入れ用のようなテントが並んでいてちょっと怖い。

入り口には守衛さんが番号の書かれた小さな紙をくれて、番号の順に体温計を渡されて検温。お母さんを迎えに行った老健もそうだったけれど、その体温計が脇の下で計るタイプ。都度消毒してくれたけれど、最近自分の受診で通院した2ヶ所の病院は非接触型の体温計だったのでなんとなく気持ち悪いと思った。


診察室のドア横にあるパネルに受付番号が表示される。お母さんは糖尿病型緑内障のせいで右目の視野がほとんど欠損しているため左目だけで見ているが、裸眼でもよく見えている。コンタクトレンズを入れているわたしより見えている。

お母さん:「お母さんは何番だ?」
わたし:「13番だよ」 
お母さん:「嫌な番号だな、絞首刑だ」
わたし:「デスバーイハンギング!(death by hanging!)ってやつ?」
お母さん:「そうだ。絞首刑台までの階段は13段なんだぞ、知ってるか?」
わたし:「何かで読んだか聞いたかしたけど、それほんと?」
お母さん:「・・・」

お母さんはたまに無言になる。しばらくすると、また繰り返す。お母さんは何番だ?13番だよ、絞首刑だ云々。今回は4回くらいリピート。話す内用があまり気分のいい中身ではないから、わたしはなんとなく小声になるけれどお母さんはお構い無し。昔からお母さんは日本史が好きで、開戦から終戦、終戦処理にも詳しい。巣鴨プリズン系も得意だから、13階段の話もあながち間違ってはいないのかもしれない。ちなみに池袋にあるサンシャインシティは巣鴨プリズンの跡地。巣鴨なのに池袋。

これまで担当してくれたN村先生は転勤してしまい後任のY下先生とご挨拶。

先生:「担当のY下です」
お母さん:「どーも。よろしく」

なんとなく上から。

先生:「どうですか?痛みますか?」
お母さん:「まあね、たまにね」
先生:「転んだりしてませんか?」
お母さん:「たぶんね」

怖いものなしだな。

先生:「レントゲン見ても新しく骨折はしていませんから、このままコルセットはしなくて大丈夫ですね。つけっぱなしだと筋力落ちてしまうので」
お母さん「・・・」

先生:「では。次回は3ヶ月後、骨粗鬆症のお薬と痛み止出しますね」
事務の女性:「次回は8月7日です
お母さん:「どーも。お世話様でした」

+++++++++++++++++
3ヶ月ぶりに会うお母さんは、また少し痩せたような気がした。老健では4人部屋、食事のテーブルもその4人で、毎日楽しくお喋りをしているそうだ。みんな認知症なので同じ内容を繰り返しても、今初めて聞いたかのように反応して話が尽きないらしい。

老健は室温管理がされているのでそんなに必要ないかもしれないけれど、冬物の服しか預けていないので、夏物の服を用意して預けた。受付までしか入れないので、スタッフのお兄さんにお願いした。持ち物には全てに名前を書く。わたしたちが子供の頃、幼稚園や小学校へ上がるときにお母さんが書いてくれたように。

お母さんは特養老人ホームにはまだ入れないけれど、老健に入れることができて良かった。管理されているからだけれど、体重も減り顔色も良く機嫌も良い。もしも家にいたらどうなっていたことだろう。そしてこのコロナ。考えるだけでも恐ろしい。お陰様でお母さんは元気に暮らしている。ありがたい。

エゴノキの花が咲いていた。下を向いて咲く白い花。エゴノキは5月7日の誕生花で花言葉は壮大だそうだ。種はヤマガラの好物らしい。