『必死剣鳥刺し』
藤沢周平の短編小説、「隠し剣孤影抄」に入ってます。
この“隠し剣シリーズ”は、どの作品もすばらしくそれぞれの秘剣の技自体
にも魅かれるのですが、その技を使うまでのプロセスが非常に面白くよく
できています。年齢の大小に関わらず楽しめる小説だと思います。
この“鳥刺し”はサラリーマン必見と言われる意味が良くわかる作品です!
私は本で読んでるのですが改めてこの作品の深さを痛感しました。
<あらすじ>
東北・海坂藩。藩士・三左エ門(豊川悦司)は、藩の混迷を招いていた藩
主の愛妾・連子を、ある日突然刺殺する。しかし、彼に下されたのは、異
例の軽い処分。その表向きの理由を主人公三左エ門は受け入れ人生を
立て直そうとするのだが…隠された本当の理由はラストで明らかに。
裏切られたことを知ったとき、三左エ門の必死剣が最後に炸裂!
<よくわかる解説(ネタバレ)
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東北・海坂藩は藩の財政は苦しく役人達には重く張り詰めた空気が立ち
込めていた。その最大の原因は殿様の妾(めかけ)だった。殿様はこの美
しい妾に骨抜き状態。おまけにわがまま妾は藩政に口を出し始め、あげ
くの果てに勘定方責任者に「財政難はおまえのせい」と切腹させる始末。
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会社社長が自分の愛人を役員として社内に迎え入れ、その愛人が
何も知らないくせに経理課にあれこれ口を出して経理部長をクビにさせ
たと思って下さい。
そんな藩の状況の中で主人公三左エ門(豊川悦司)は妻を病で失い、生
きる気力を失っていた。そして自分に死に場所を求めるべく(切腹)覚悟で
この妾を刺し殺した!
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クビになるのが嫌で社長の愛人に誰も文句の言えない社員たちの中
に正義感の非常に強い社員がいて、クビ覚悟でこの愛人を社外へ追い
やった。て感じでしょうか。
当然重い処分が下されると思っていた三左エ門だが下されたのは軽い処
分だった。しかしこれには裏があったのだ…
藩主(殿様)に唯一苦言を呈するのは『別家』と称される藩主家の血縁にあ
たる家老の帯屋隼人正(吉川晃司)だ。
殿様のご機嫌取りの中老津田民部(岸部一徳)にとって、剣の達人でもあ
る帯屋隼人正は目の上のたんこぶで将来殿の命も脅かす存在になると考
えていた。そこで妾を刺し殺した三左エ門が藩きっての秘剣の達人でもあ
ると知った津田民部は三左エ門を殺さずに軽い処分で済まし、殿のボディ
ーガード役に抜擢する。三左エ門は妾を殺したことで殿様には嫌われてい
る中でのボディーガードの仕事は精神的に辛いがそこは武士、粛々と与え
られた仕事に徹する。そんな三左エ門を献身的に世話するのが亡き妻の
姪にあたる里尾(池脇千鶴)だった。そしていつしか二人は結ばれる。
そして三左エ門と帯屋隼人正の対決の時がやってきた!
妾がいなくなっても民百姓を思いやらぬ無能の殿様に対し、ついに堪忍袋
の緒が切れた帯屋隼人正(吉川晃司)は殿様を殺すべく城へ乗り込んでき
たのだ。
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たとえ無能な気に食わない上司と言えども自分に与えられた仕事を
信念を持って貫くのが武士道。気に入らなければ直ぐに仕事を止めてし
まう最近の若者達には是非とも見習って欲しいところですね。
そして「自我を犠牲にしても他人を思いやる気持ち」は、はたから見てる
と何ともかっこいいのです!
緊迫した城内の空気の中で三左エ門と帯屋隼人正の死闘が始まり互い
の剣が炸裂!そして三左エ門が帯屋隼人正を討ち取った。
ところがこの時、「しめしめこれで我々の脅威がいなくなった」とばかりに中
老の津田民部(岸部一徳)がなんとあろうことか「三左エ門は帯屋隼人正様
を殺しおった!乱心じゃ!」と言い出し、他の家来達に三左エ門を殺せと
命じる。中老の津田民部に裏切られたとわかった三左エ門は大勢の家来
達を敵にまわして必死に斬り合うのだった。
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ここからは息もつかせぬ見所です!
そしてずたずたに切られついに息絶えてしまう。
と誰もが思っていた…
しかし死んではいなかった。
絶命寸前の三左エ門は最後の最後に秘剣『鳥刺し』くりだすべく死んだ
振りをしていたのだ!
伏せた状態で微動たりともしない三左エ門…
安心して三左エ門に近づいてゆく中老の津田民部…
そして津田民部が射程距離まで近づいた瞬間!
秘剣『鳥刺し』が炸裂する!
そして二人は絶命…
この秘剣を繰り出すまでの「間」と「緊迫感」は見事です!
この死闘を予見していた三左エ門は愛する里尾を知り合いの所に行かせ
ていた。そしてその里尾はと言えば…
ラストシーンはなんとも切ない…
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どうです?見たくなってきたでしょう?ぜひ映画見てみて下さい。