皆様は、「尿酸」と聞いてどんなことを思い浮かべますか? 「足が腫れて激しく痛む痛風という病気の原因」あるいは「健康診断で高いと言われたけど・・・よくわからない」などでしょうか。 今回は、このあまり聞きなれない「尿酸」についてのお話です。
尿酸は、プリン体と呼ばれる物質のヒトにおける最終代謝産物です。プリン体には、アデニン、グアニンといった核酸(遺伝子の本体であるDNAやRNAの一部)やアデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれる生命活動に必要なエネルギーを貯蔵する物質があります。すなわち、プリン体は細胞すべてに含まれているため、細胞の新生、崩壊、代謝やエネルギー活動によって絶えずその代謝産物が生成されていることになります。この代謝産物の最終が尿酸です。尿酸は主に肝臓により産生され、腎臓から排泄されます。通常は産生と排泄のバランスが保たれているのですが、産生過剰あるいは排泄低下により血中の尿酸値が高くなった状態を高尿酸血症(7.0mg/dl以上)といいます。
高尿酸血症の原因として、遺伝、食事(プリン体やアルコールの摂取量増加)、運動不足あるいは逆の過度の運動、ストレス、肥満があげられています。 飲酒により尿酸値があがることが知られていますが、そのメカニズムとして、①アルコールによってATPの分解が促進され尿酸生成が増える、②アルコール飲料にプリン体が含まれている、③大量飲酒により生成された乳酸が尿酸排泄を抑制する、などが報告されています。日本人の高尿酸血症の割合は、成人男性で30%、女性は3%であり圧倒的に男性に多い疾患です。
さて高尿酸血症が続くと、血液中で溶解していた尿酸が溶けきれなくなり、関節内や腎臓で結晶化して貯まるようになります。関節内の結晶が炎症をおこすと痛風関節炎と呼ばれる激痛を伴う病気になります。腎臓内で結晶化すると痛風腎になります。痛風発作の好発部位は、下肢で特に足第1趾(親指の付け根)が赤く腫れ歩けなくなります。痛風腎では、腎機能が障害されるだけでなく、尿酸結石が尿管につまり水腎症となり腰背部激痛の原因となります。
また痛みが生じなくても高尿酸血症が持続することで動脈硬化が進行し、脳血管障害、虚血性心疾患の原因となることも疫学調査から明らかにされています。
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