角川文庫
2018年8月 初版発行
解説・東えりか
371頁
戦国乱世を生き抜き、徳川の天下となったのちも大名として、茶人として名を馳せた小堀遠州の人生を描きます
68歳となった遠州
徳川幕府の伏見奉行を務める遠州のもとをさまざまな人物が訪れます
奈良の豪商で塗師屋の松屋久重
作庭を手伝ってきた家臣の村瀬佐助
姫宋和の茶人として名高い金森宋和
義理の弟で作庭の右腕となった中沼左京
弟子の五十嵐宗林
医師の宗由
絵師の狩野采女
鹿苑寺の鳳林和尚
語り合うのは、嘗て遠州が関わった戦国の歴史の裏でひっそりと行われた交渉事
遠州は大名茶の総帥として、禁裏や名刹の作庭を行った作事奉行として、何よりも千利休の流れを引く、古田織部の弟子として、争いごとを丸く収める画策をしてきたのでした
男たちの覇権争いの陰で涙をのんだ女たちの悲哀も描かれます
なかでも気の毒だったのは徳川秀忠の娘・和子の入内を快しとしない後水尾天皇が寵愛したお与津御寮人です
遠州の働きでお与津御寮人が禁裏を出て尼となり、無事和子入内が遂げられます
天皇の寵愛は天皇がお与津御寮人をひとりの『人』としてみていたのではなく徳川和子入内を阻止する目的であることが分かっていた彼女は遠州の義理の父、藤堂高虎の言葉に禁裏を出る決意をするのでした
後水尾天皇と入内後の和子は仲睦まじかったとのこと
せめてもの救いです
本能寺の変の少し前から徳川家光の世まで
天下一の茶人の人生を通して、何が正しい生き方であったのかを問い続ける、心にズシっとくる歴史小説でした
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます