毎日新聞出版
2023年5月 発行
上巻 347頁
下巻 382頁
横道世之介38歳
吉祥寺とは呼べない場所に立つ下宿「ドーミー吉祥寺の南」でオーナー・あけみと事実婚状態で暮らしています
カメラマンとして独り立ちしたものの、まだ名前が売れるまでには至っていませんが、仕事が切れることはなく、下宿人たちやあけみ、仕事上の先輩、後輩らと毎日を彼らしく『リラックス』して過ごしているようです
間に挟まれるのが前2作の話で、突然と過去に引き戻され、また現在(2007年~2008年)に戻り、の繰り返しですが、何の違和感もなく世之介の世界が頭の中に広がります
世之介自身が登場しない、あけみの祖母や、中学の国語教師の若かりし日の話も、現在に繋がってくるので問題なし
最後に、世之介の死から15年後が描かれます
心に残る言葉が数々出てきました
中でも世之介の母親のものにグッときました
世之介の出産時に危険な状態の中
万一の時は必ずこの子を助けて下さい。この子を待っている人がいっぱいいるんです。この子が産まれてくるのを、どこかで待ってる人たちがいるんです。この子の方を助けてあげて。この子をそんなみんなに会わせてあげて。きっと人生のいろんなところで、この子を待っている人たちがいるんです。だからどうか、この子をその人たちに会わせてあげて。
これは、ブータンから来日し、しばらくドーミー吉祥寺の南で暮らしたタシさんの輪廻転生の話と繋がります
もうひとつ
世之介の死に関し
代々木駅のホームで、線路に落ちた女性を見た瞬間、きっとあの子は「もう、ダメだ」じゃなくて、「大丈夫、助けられる」って思ったのよね。そう思えたあの子を誇りに思う。
残された人々は、世之介がもうこの世にいないことが、本当に悲しいけれど、見方を変え、世之介から学んだもの、世之介がその人生のすべてをかけて教えてくれたことをを引き継いでいくのでしょう
良い物語を読ませてもらいました
スピンオフや、またまたその後の物語も読みたいような気もしますが、これでお終いが良いかな
『証城寺の狸囃子』永遠(とわ)ちゃんバージョンが頭から離れません♪
ありがとう!
横道世之介!
吉田修一さん、何か考えてらっしゃるかも?
期待しちゃいますよね。
吉田修一さんの他作品(出身が長崎で、ゲイで、という設定)だとあまり親とうまくいっていない感じだったので、よけいに嬉しくなりました。
個人的には、またちょこっとでも会いたいかな。
しばらく先でも良いですから。
http://blog.livedoor.jp/todo_23-br/archives/31798380.html
こにさんの印象に残ったところ、私も心に響いていました。
お母さん、ひょうひょうとしていたけれど、頻繁に連絡を取り合ってなくても息子の世之介のこと、心から一人の人間として、なんというか・・尊重していたんでしょうね。