小学館
2023年8月 初版第1刷発行
359頁
舞台は令和と昭和の、とある出版社
コロナ蔓延の社会で閉塞感と暗いムードの中、女性ファッション誌局から学年誌児童出版局へと意に沿わない異動でやる気をなしている明日香(28歳)
そんな折、会社である文林館が出版する児童向けの学年誌100年の歴史を調べるうちに、今は認知症になっている祖母が、戦中に臨時職員として学年誌の編集に関わっていたことを知ります
なぜ、祖母はこれまでのことを自分に話してくれなかったのか
その秘密を解くうちに、飛鳥は子どもの人権、文化、心と真剣に対峙し格闘する先人たちの姿を発見してゆくことになります
戦争、抗争、虐待
繰り返される悪しき循環に風穴をあけるため、私たちになにができるのか
出版社勤務の女性が地味な部署に異動させられ憤懣やるかたない、という冒頭でNHKドラマ「舟を編む」を思い出します
だからといって退職せず与えられた場所で頑張り成長していく姿は同じでした
明日花が抱えるわだかまりが文林館100周年事業の準備を進めるうちに少しづつ解消されていく様が良かったです
『昭和』の最後で各ピースが収まるところに収まってスッキリ
『令和』の最後で、母と明日花、同期の女性と明日花の和解にスッキリ
雑誌は時代を映す鏡
古内さんの熱い思いが込められた本書
出版業界の100年を振り返りながら、明日花の祖母、母、と親子三代の生き様に思いを巡らす良質な読書時間でした
でもね、どうしても私の中で「なんか小学館に忖度してないかい」という雑念が混ざってしまうのです。これが出版社の企画とは無関係に作られた作品なら、もっと素直に読めた様な気がします。
小学館を応援したいという気持ちもあったので深く考えずに読みました。