訳・関口涼子
白水社 EXLIBRIS
2009年10月 発行
150頁
アフガンからフランスへ亡命した作家による《ゴンクール賞》受賞作
初めて、母国語ではなくフランス語で書かれた作品なのだそうです
原題は「サンゲ・ブール」
ペルシア語で「忍耐の石」
その魔法の石に人に言えない不幸や苦しみを打ち明けると、石はそれをじっと聞き、飲み込み、ある日、こなごなに打ち砕ける
その瞬間、人は苦しみから解放される、というペルシアの神話からとられているそうです
アフガンかどこか、イスラム文化圏の国
戦争が続く町
戦場から植物状態となって戻った夫
夫が横たわる狭くて何もない部屋でコーランの祈りを唱えながら看病を続ける妻
やがて、恢復の兆しを見せない夫を「サンゲ・ブール」に見立てて自らの罪深い秘密を語り始めるのでした
演劇の舞台を思わせる限られた空間で起こる物語
読者に見えるのは夫が横たわる部屋のみ
部屋の外で起こることは全て音や妻の言動などによって伝えられるだけです
頁数は少ないものの最初から最後まで張りつめた緊張感のある雰囲気の小説でした
ここに描かれている、イスラム文化圏での女性の立場の弱さ、過酷な状況はフィクションではなく、現実に起きている日常なのです
そして女性にとって辛い状況は男性にとっても辛いものなのです
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