訳・奈倉有里
新潮クレストブックス
2016年2月 発行
195頁
1991年夏
猛暑のニューヨーク
亡命ロシア人で画家のアーリクの重症の床に集まる5人の女たちと友人たち
妻、元恋人、愛人、友人
彼らはアーリクとともに過ごした決して平坦ではなかった人生の道のりを、祖国のクーデターの様子をテレビで見ながら、ウォッカを吞みながら追想します
アーリクの葬儀の後、皆に渡されたアーリク最期の贈り物が皆の心に不思議な祝祭感と幸福感をもたらすのでした
まだ病気が発症する前のアーリクらと死を間近にしたアーリクら
アーリクと彼ら-仲間たちと呼んでも良いかも-の物語が交互に語られます
死を前にした人が主人公ということで暗い話を想像していましたが、読み終わっってみればタイトル通りの陽気な物語でした
それはアーリクという人の魅力からくるのでしょう
彼は、出身国、人種、宗教、職業に関係なく出会った人全てと仲良くなります
無理なく自然に『寛容』な人なのです
ウリツカヤの作品を貫くテーマのひとつが「不寛容、無理解との闘い」とのこと
訳者あとがきより
ウリツカヤへの感謝の言葉
「寛容」という言葉を、あなたは大切そうに、様々に言い換える
それぞれの状況の中で、現代を生きる私たちに届くように
寛容-この言葉を軽んじている人がどれくらいいるだろう
寛容を軽んじた先には「無理解」があり、無理解の極限に個人の、国家の、権威的なものすべてによる「暴力」があるのだということを、あなたは幾度も語ってきた
あるインタビューで「解決策を示さないのか」そう言われた時、あなたは答えた
問題を語ること、考えること、共有すること、それは既に、ひとつの行為なのだ
際限のない無理解と棒局に拮抗するひとつの「行為」なのだ
いつものようになかなか覚えられない外国人の名前と立場を何度も確認しながらでしたが満足の読書時間でした
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