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村井理子「兄の終い」

2024年01月10日 | ま行の作家


CCCメディアハウス
2020年4月 初版
2020年5月 初版第3刷
169頁

宮城県塩釜警察署刑事第一課から夜遅く、「私」の携帯にかかってきた1本の電話
それは、既に両親を失くしている「私」の唯一の肉親であり、もう何年も会っていなかった兄の訃報でした
発見者は兄と暮らしていた小学生の息子で今は児童相談所に保護されているといいます
周囲に迷惑ばかりかける人だった兄
二度目の離婚後、多賀城市へ住まいを移したものの、身体を壊し、職を失い、貧困から這い上がることなく死んだ兄を弔うために、父方の伯母、元妻、娘、息子、妹である「私」が集まります

理解できない兄を避けて暮らしてきた「私」
兄の部屋の片づけをしながら思い出されるのは幼い頃は優しかった兄の姿
兄が必死に生きていた痕跡がいたるところに現れ、心を苛みます
こんなことになるのなら、優しい言葉をかけていれば良かった、と思うのでした

あとがきより
今でも兄を許せない気持ちはある
そしてそんな気持ちを抱いているのは私だけではないと思う
兄は様々な問題を引き起こし、多くの人に辛い思いをさせ、突然去って行った
そんな兄の生き方に怒りは感じるものの、この世でたった一人であっても、兄を、その人生を、全面的に肯定する人がいたのなら、兄の生涯は幸せなものだったと考えていいのではないか
だから、そのたった一人の誰かに私がなろうと思う

自分には経験のないことで100%共感はできませんでした
「私」と共に兄の終いをしてくれた、伯母、元妻、娘、息子、塩釜警察署の担当者、大家、遺品整理業者、児童相談所の担当者、2週間だけ息子の里親になってくれた夫婦、息子の学校の先生たち、クラスメートらがいなければ、きっと「私」は混乱するばかりで立ち直れなかったのではないでしょうか
兄は一人で死んだけれど、多くの“仲間”がいる「私」に弔ってもらって良かったと思いました

死んだ者勝ち、です

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