編・日下三蔵
出版芸術社
2013年5月 初版発行
429頁
文庫未収録作品に、アンソロジーや再編集本に収録されたきり文庫化の機会を逸してきた作品、さらに一度も本になっていない未刊行作品を増補してまとめた全五巻のうちの第二巻
第一部
「夏至祭の果て」
児童書「海と十字架」発表後、大人の物を、と望まれ主題をもっと掘り下げたもの
1976年下期の直木賞候補に選ばれています
キリシタン弾圧の頃に、殉教者としてではなく、自らの意思で棄教し、そのために二重にも三重にも苦しみ、それに必死に堪えていく青年の姿を描きます
江戸幕府による禁教令と鎖国のもと、イエズス会による布教の悲惨さは全く酷いものでした
作者後記より
作中、天正少年使節の後年が少し出てきます。四人の使節の中でただひとり後に背教した千々岩が主人公に語る言葉は、作者自身が抱いた疑問と感想でもあります
その言葉とは
市之助、その方が棄教いたしたことは心得ておる。だが、キリシタンをかばいたていたせば、その方もキリシタンとみなされる。ここでは、あいまいな態度は許されぬと、私は申したはずだ。おまえは信じてもおらぬものに殉ずることはできぬと棄教した。だが、それだけでは、事はすまぬ。キリシタンでない者は、キリシタンを排さねばならぬ。キリシタンのために一臂の力を貸すことも許されぬ。キリシタンをあばくお上のために尽くさねばならぬ。キリシタンは法にそむく罪人だからだ。
重い内容でした
力の入ったキリシタン物ですが小説としては不出来だったようで
直木賞選考者評は、9人のうち6人までが本作に触れておらず、言及のあった3人にしても、作品として水準に達していない、など厳しいものでした
第二部
白泉社の愛蔵版のうち時代小説編「伝奇」に初めて収められた作品
「渡し舟」「風の猫」「泥小袖」「土場浄瑠璃の」「黒猫」「清元 蛍沢」
第三部
これまで単行本に収められたことのない作品
「棒」「冰蝶」「花道」
「冰蝶」だけは読んだことがあるような…
第三巻も楽しみです
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