文藝春秋
2022年12月 第1刷発行
289頁
予備知識無しで読み始めました
タイトルの『幽霊』は何かの比喩だろうと思っていたのですが、「本物」で、夜一人で読んでいると何とも気味の悪い恐ろしさに襲われて困りました
表紙カバーやプロローグに描かれる特急の最終電車の運転士から見た踏切の様子からして怖い!
でも、読むのを止められません
1994年冬
東京・下北沢にある踏切で撮影された一枚の心霊写真
同じ踏切では列車の非常停止が相次いでいました
雑誌記者の松田は読者からの投稿をもとに心霊ネタの取材に乗り出しますが、やがて彼の調査は幽霊事件にまつわる思わぬ真実に辿り着きます
妻を亡くし、希望のない生活をしていた松田
心霊写真に写り込んでいると思われる24歳で殺された女性の身元を探りながら、40代で亡くなった妻は幸せだったのだろうか、考え続けます
元・社会部記者の経験を活かして生きていた頃の女性に近づく中、とんでもなく大きな闇が見えてくるのでした
幼い頃から幸せとは縁遠い暮らしをしてきた女性ですが、最後にようやく松田によって救われたのでしょう
松田もまた、妻を失った事実に向き合い、この先を生きていくことができるようになったと思いました
松田の心理描写やそこここに張り巡らされた伏線の回収も見事
11年ぶりの新作長編は期待通りのものでした
来月発表予定の第169回直木賞にノミネートされています
他のノミネート作品を読んでいないので何とも言えませんが…
寡作の高野さんには少ないチャンスなので受賞して欲しいです
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