訳・加賀山卓朗
集英社文庫
2003年12月 第1刷
2011年11月 第8刷
上巻 390頁
下巻 353頁
レイフ・ファインズ&レイチェル・ワイズ出演の映画を観て興味を持ちました
ナイロビの英国高等弁務事務所に勤める外交官ジャスティンはガーデニングをこよなく愛する中年男性で礼儀正しく誠実な人柄でも知られています
そんな彼のもとに突然、若くて美しい最愛の妻テッサが何者かに襲われ殺害されたという知らせが飛び込んできます
テッサは死の直前まで熱心にナイロビの貧しい人々の救援活動をしていました
ジャスティンは彼女の生前の行動を克明に追うことから事件の全貌を解明しようと決意します
それは図らずもテッサの問題に彼自身が向き合うことでもありました
第三世界に対する医薬品提供の恐るべき実態、官僚と多国籍企業の癒着、それを告発するNGO
ほとんど知らなかったテッサの活動を知るにつれジャスティンの周囲にも不穏な影が忍び寄ってきます
面白かったですが、物語の背景にある闇は深く複雑で映画を先に観ていたおかげで何とか読めたというのが正直なところです
多国籍企業のことを
治験していない薬を売りつけ、臨床試験をさっさとかたづけて地上の虐げられた人々をモルモットに使う輩だ
と表現する部分に現在世界中で開発が進む新型コロナワクチンが連想されました
何と恐ろしい世界でしょう
ノンフィクションと錯覚しそうな内容ですが、ル・カレは巻末の「著者の覚書」で実在する物語ではないと明言していますのでフィクションということにしておきましょう
モデルとなった出来事や人物は実在するらしいですが…
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