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宮部みゆき「桜ほうさら」

2013年08月04日 | ま行の作家

 

PHP研究所
2013年3月 第1版第1刷発行
605頁

 

父の汚名をそそぎたい
そんな思いを胸に秘め江戸に出て来た古橋笙之介
人生の切なさ、ほろ苦さ、人々の温かさを知り、恋や挫折を経験して人間的成長をとげていく

 

 

宮部さんの時代物で男性が主人公というのは珍しいのではないでしょうか

 

上総国の小藩、搗根(とうがね)藩で小納戸役についていた父・古橋宗左右衛門は突然藩の目付け役の取り調べを受けることとなる
御用達の道具屋から賄賂を受け取った疑いがあるというのだが宗左右衛門には全く身に覚えのないことだった
しかし、道具屋が出した証拠というのが宗左右衛門が賄賂の受け渡しや額などについて自ら書き記したという文書で、その手跡は宗左右衛門の目にも彼自身のもとしか見えないほど同じだった
当初は無実を訴え続けた宗左右衛門だったが、ついに罪を認め、自宅の庭先で自害、古橋家は廃絶、笙之介と兄の勝之介は母・里江の実家にお預けという処分がくだされた

 

藩の政争に絡み、無実の罪を着せられた父
さらに次の事件を危惧する江戸留守居役・坂崎の密命を受け、長屋暮らしをしながら真実を求めて父の手跡としか見えない文書を書き記した「代書屋」を探し回る笙之介がついに事件の黒幕と陰謀の内容を知る日がやってくるのだが、それは彼にとってはあまりにも辛い事実だった

 

下級武士、政争とくるとまずは藤沢周平さん、さらに葉室麟さん、長屋の人情の場面などでは山本一力さんが思い出され、一体誰の小説を読んでいるのかわからなくなる時がありました
しかし、女性の登場人物の描写の細やかさはやはり女性作家ならではです
『おっつかっつ』などという単語が出てくると、「あ、宮部さんだ」となりますしね

 

 

本筋とは別に語られる笙之介が関わった話の中では、符丁をめぐる話が良かったですが、符丁の解読はやや拍子抜けの感がありました
その話に登場した長堀金吾郎という老いた武士が語る言葉はなかなかに薀蓄があり、いうなれば最優秀助演男優賞的存在ではないでしょうか

 

 

すごく面白いとか泣けるとかいう小説ではありませんでしたが読みごたえはありました

日中、仕事の最中にふとお話の続きが気になったりしたし (^_^;)

 

 


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