原題 EVERYTHING’S EVENTUAL vol.Ⅱ
訳・浅倉久志他
新潮文庫
2004年 6月 発行
2008年 10月 12刷
解説・風間賢二
414頁
「なにもかもが究極的」 Everything’s Eventual
訳・浅倉久志
ある『力』を持った青年
生活全般をある組織に面倒をみてもらいながら、その『力』を使ってある事件を起こします
組織の本質に気づいた青年が最後に、自らの意志で起こした行動は?
超能力者の悲しみと苦しみを描いたSFホラーです
誰かの著書にこのような話があったように思いますが、使い古された感じもなくこれはこれで楽しめます
「L・Tのペットに関する御高説」 L.T.’s Theory of Pets
訳・風間賢二
妻に逃げられた男の愚痴話がユーモアを交えて延々と続くのかと思いきや、ラスト近くの恐怖と悲劇、結末がはっきりしない不気味さ
意外な展開に釘付けとなりました
「道路ウイルスは北にむかう」 The Road Virus Heads North
訳・白石朗
これは本当に恐ろしい話でした
ガレージセールで購入した気味の悪い絵画
北に向かう途中、見るたびに絵画の様子が変わっていくのです
そして最後には…
今、思い出してもゾッとします
「ゴーサム・カフェで昼食を」 Lunch at the Gotham cafe
訳・白石朗
離婚協議中の夫婦が弁護士と共に昼食に出かけたカフェで遭遇したとんでもない出来事
店員が殺人鬼に変貌して店の中で暴れ回り、知人でも何でもない元・夫婦を追い詰めます
これはあり得ない設定でしょう
そんなあり得ない状況の中でも元・妻は元・夫の復縁希望を徹底的に拒否するという『ブレの無さ』に苦笑いでした
「例のあの感覚、フランス語でしか言えないあの感覚」 That Feeling,You Can Say What It Is in French
訳・池田真紀子
裕福な夫婦が第二のハネムーンで訪れたフロリダ
フロリダに到着後、夫の運転する車で目的地に向かう途中、妻は常に既視感に囚われている
大丈夫か?と聞かれ、何でもない、と答えるとまた時間が戻りフロリダに向かうチャーター機の中にいるのだった
あの感覚=デジャヴと呼ぶにはあまりにも残酷な話です
謎の侵略者との戦闘に挑んでは戦死すると言う不条理世界に囚われた男女を描いた、トム・クルーズ主演の『オール・ユー・ニード・イズ・キル』を思い出しました
まるで、死後絶えることのない地獄を味わうという無間地獄のようです
「一四〇八号室」 1408
訳・風間賢二
西洋では忌数である13
落ち目の男性ライターが、謂れのあることで有名なドルフィン・ホテルの実質13階にある1408号室で体験する恐怖
日本でも同じような恐怖譚はありますが、欧米とは恐怖の質が違うようです
前置きの長さに焦らされ焦らされ、ようやく室内に入った男性の味わう恐怖といったら!
焦らされた分、一気に急上昇する恐怖に瞬きするのも勿体ないくらい一気読みでした
「幸運の25セント硬貨」 Luckey Quarter
訳・池田真紀子
ホテルの室内清掃で得る収入で生計をたてている女性
チップの25セントがあれよあれよという間に24000ドルに増える、というわらしべ長者みたいな話
かと思ったらそれは白昼夢
ところが、どうもそれは現実のものになりそうな気配が…
全ての物語
落語に通じるものがあるような
ユーモアと恐怖と意外な展開とオチを楽しませてもらいました
スティーヴン・キング
実に上手いストーリーテラーですね
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