訳・田久保麻里
白水社
2005年7月 発行
141頁
草むらの中にひらかれた小さな町で父と暮らしている少年プリモ
彼は、広い草むらの中に何度も往復して作ったトンネルを歩くのを日課にしていて、歩きながら色々なことを考え空想し、日々の悲しみや寂しさを紛らわせています
父は以前、町にあるコンプレッサー工場で働いていましたがなぜか解雇されてしまいます
その後、知り合いの農園の手伝いをして収入を得ていましたが農園の収穫物を勝手に持ち帰ったとしてまた解雇され、今は町の人々の家で庭の草取りや芝刈り、簡単な修理など便利屋のようなことをして生計を立てています
父子の生活は貧しいものですが、家の裏に生えている蔓バラを増やし育ててひと稼ぎするという夢があり、毎日ガラス瓶に植えた蔓バラの世話をしています
電気を止められてしまい父と語り合いながらロウソクの灯りで過ごす夜
父親というのが真面目に働けない性分で、些細な悪事、例えば人に見咎められないコソ泥程度なら自分の生活に必要だからと平気でやってしまう
そんな父親を傍で見ながら育つプリモ
悪いことと分かってはいても大好きな父親に従います
神様どうか許してください、と祈りながら…
大人と子どもの間で揺れ動くプリモは少しずつ経験を積み重ね大人になっていくのでした
静かな余韻の残る小説です
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