みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0152「リセットの呪文」

2018-02-02 19:10:47 | ブログ短編

 僕(ぼく)はどんな失敗(しっぱい)もたちどころにリセットしてしまう、特別(とくべつ)な呪文(じゅもん)を知っている。今まで、これを使って社会(しゃかい)の荒波(あらなみ)を幾度(いくど)も乗り越(こ)えてきた。例(たと)えば、僕のミスで会社に損害(そんがい)を与(あた)えた時も、リストラ対象(たいしょう)にされた時もこの呪文は役(やく)に立った。
 僕がどうしてそんな呪文を知っているかって――。そんなこと教えられるわけないじゃないか。それを教えてしまったら、呪文の効果(こうか)が無(な)くなってしまうだろ。僕は特別な人間なんだ。この呪文を使って、会社の頂点(ちょうてん)に立ってやるんだ。
 ある日、家に帰ってみると妻(つま)の機嫌(きげん)が悪(わる)かった。僕を見るなり口をとがらせて、
「早く帰って来るって、言ったよね」
「うるさいな。こっちは仕事(しごと)なんだよ。仕方(しかた)ないだろ」
「今日が何の日か忘(わす)れちゃったの? 今日は、私たちの結婚記念日(けっこんきねんび)よ!」
 僕は、完全(かんぜん)に忘れていた。けど大(だい)の男が、いちいちそんなこと覚(おぼ)えてるわけないだろ。こうなったら、あの呪文を使うしかない。僕は叫(さけ)んだ。「イサナン、メゴニトンホー!」
 彼女は口を開(あ)けたまま動けなくなった。これですべてリセット。なかったことに…。
 でも、すぐに彼女は叫んだ。「イナゲ、アテシルユー!」
 次の瞬間(しゅんかん)、僕は彼女の前で土下座(どげざ)をしていた。まさか、妻には効果が無いなんて…。
<つぶやき>そんな便利(べんり)な呪文があったら、何度でも使ってしまいます。乱発(らんぱつ)に注意(ちゅうい)です。
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