みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0169「誘拐犯の事情」

2018-02-28 18:57:18 | ブログ短編

「上手(うま)くいったか?」古びた倉庫(そうこ)の中で黒ずくめの男が言った。
「ああ、この中に入ってるよ」
 外から戻(もど)ってきた、これも黒ずくめの小柄(こがら)な男が答えた。その男が持っている麻袋(あさぶくろ)がわずかに震(ふる)えた。それを見て、待っていた男は不思議(ふしぎ)そうに訊(き)いた。
「おい、やけに小さいじゃないか」
「いや、そんなことないよ。まだ、子供(こども)だからな」
 その時、麻袋の中から変な声がした。待っていた男の顔色(かおいろ)が変わり、
「お前、ヘマしてないよな。ちゃんと、あの屋敷(やしき)へ行ったのか?」
「ああ、行ったさ。この間、二人で下見(したみ)した…」
「そこの、アリサっていう孫娘(まごむすめ)を連(つ)れて来たんだろうな?」
「もちろん、そうさ。アリサって呼(よ)ばれてた奴(やつ)を連れて来たよ」
「じゃ、何なんだ今のは…」
「きっと、お腹(なか)が減(へ)ってるんだよ。餌(えさ)あげないとな」
 小柄な男が麻袋を開けると、小さな子犬(こいぬ)が顔を出した。男は子犬の頭を優(やさ)しくなでながら言った。「今頃(いまごろ)、あの屋敷の奴ら捜(さが)してるだろうな」
 待っていた男は椅子(いす)に飛び乗ると、「俺(おれ)は犬は嫌(きら)いなんだ! 何で犬なんか誘拐(ゆうかい)したんだ」
「誘拐じゃないよ。勝手(かって)について来たんだ。ここで飼(か)っちゃダメかな?」
<つぶやき>お互いの意思(いし)が通じてないと、とんだことになっちゃうかもしれませんね。
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