みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0156「小指娘」

2018-02-10 19:17:45 | ブログ短編

 小さな身体(からだ)の私(わたし)は、恋(こい)をするのも命(いのち)がけ。彼に近づくときは、大声で叫(さけ)ばないと踏(ふ)みつぶされてしまう。それに、彼の指(ゆび)で頭をナデナデされるときは、気をつけないと骨折(こっせつ)してしまうかも。キスのときなんか、鼻息(はないき)で飛(と)ばされそうになったり、下手(へた)をすると呑(の)み込まれてしまうかもしれない。
 それでも、こんな小さな私なのに、彼はとっても優(やさ)しくしてくれる。私のことを助(たす)けてくれるの。この間も、猫(ねこ)に襲(おそ)われそうになったとき、彼が飛んできて追(お)っ払ってくれた。私も、彼のために何かしてあげたい。でも、私に何ができるんだろう。
 彼のためにお料理(りょうり)を作っても、彼の一口分にもならないし。部屋のお掃除(そうじ)をしても、鉛筆(えんぴつ)一本動かすのもままならない。彼は言うのよ。私がそばにいるだけで良いって。でも、私は彼のために何かしてあげたい。もし、私の身体が普通(ふつう)の大きさだったら、何でもしてあげられるのに。彼のことを見ているだけしかできないなんて…。
 もしかすると、彼のこと好きになっちゃいけないのかもしれない。私といるより、普通の女の子と付き合った方が、彼は幸(しあわ)せになれるはずよ。彼にそう言うと、彼は何も言わずに出て行った。私は、何だが心が震(ふる)えた。もうこれで…。
 でも、彼が戻(もど)ってきたとき、その手にはしわくちゃの婚姻届(こんいんとどけ)が握(にぎ)られていた。
<つぶやき>好きな人を一途(いちず)に思い続けることができたら。そんな恋をしてみたいです。
Copyright(C)2008- Yumenoya All Rights Reserved.文章等の引用と転載は厳禁です。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする