憧(あこが)れの野村(のむら)先輩から誘(さそ)われた。次の休みにどっかへ行かないかって…。あたしは完全(かんぜん)に舞(ま)い上がって、即座(そくざ)にOKしちゃいました。うふっ…。
お家に帰って手帳(てちょう)に書き込む。三日後、野村先輩(せんぱい)とデート――。あれ? その日の蘭(らん)に、何か書いてあるわ。あたしは、目まいを起こしそうになった。その日って、有紀(ゆき)ちゃんと遊びに行くんだった。どうしよう、こんなのって…。
せっかく先輩に誘ってもらったのに、今さら断(ことわ)るなんてできない。それに、こんなこと二度とないかもしれないわ。そうよ、有紀ちゃんの方を断っちゃえばいいのよ。でも…、デートだから行けないなんて言ったら、有紀ちゃん怒(おこ)っちゃって、あなたとは絶交(ぜっこう)よって言われちゃうかも――。そうだわ、そうよ。デートって言わなきゃいいのよ。
でも、どっかでばったり会っちゃうかもしれない。ううん、絶対(ぜったい)、会うわ。もし、先輩と一緒(いっしょ)のとこ見られたら最悪(さいあく)よ。ここは、ちゃんと考えないとダメ。先輩とは、まだ付き合ってるわけじゃないからダメージは少ないわ。でも、有紀ちゃんとはずっと親友(しんゆう)で…。
あたしは決断(けつだん)した。やっぱり友情(ゆうじょう)をとるべきなのよ。そうと決まれば、あたしの行動(こうどう)は素早(すばや)かった。すぐに先輩に断りの電話を入れた。これでいいわ。ホッとしたあたしは、お風呂(ふろ)に向かった。身も心もほぐれて部屋に戻(もど)ると、有紀ちゃんからメールが届(とど)いていた。
<今度の休み、行けなくなっちゃった。野村先輩とデートなの。ゴメンね>
<つぶやき>心配性(しんぱいしょう)でもいいんです。じっくりと考えた決断なら、後悔(こうかい)なんてないはず。
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