みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0162「責任」

2018-02-18 19:12:45 | ブログ短編

 綾佳(あやか)は新しい事業(じぎょう)のチーフを任(まか)された。これは異例(いれい)の抜擢(ばつてき)で、彼女はその責任(せきにん)の重さをひしひしと感じていた。そのためか、部下(ぶか)たちの些細(ささい)なミスにも神経(しんけい)をとがらせた。
「こんなことも出来(でき)ないの! ちゃんと確認(かくにん)しなさいって言ったでしょ。何度言わせるのよ!」
 綾佳の荒(あら)らげた声がするたびに、部屋の空気(くうき)が澱(よど)んでいくようだった。
 そんな時、補充要員(ほじゅうよういん)として一人の青年(せいねん)がチームに加(くわ)わった。彼はどんな仕事(しごと)にも誠心誠意(せいしんせいい)向き合い、その誠実(せいじつ)さは誰(だれ)もが好感(こうかん)をいだくものだった。綾佳も、いつしか彼に大切(たいせつ)な仕事を任せるようになった。同僚(どうりょう)たちは、こんな優秀(ゆうしゅう)な社員(しゃいん)がいたのかと驚(おどろ)き、綾佳よりこの青年に仕事の相談(そうだん)をするようになった。その様子(ようす)を見るたびに、綾佳の心はざわついた。チーフとしての自分の立場(たちば)が危(あや)うくなるような、そんな気がしたのだ。
 ある日のこと。綾佳が一人で残業(ざんぎょう)していると、デスクの上にコーヒーが置かれた。彼女が目を上げると、そこにはその青年が立っていた。
「あなた、まだいたの?」
「ええ。でも、もう帰ろうと思います」
「そう……」綾佳は何か言いたげな顔をしたが、言葉(ことば)をのみこんで、「お疲(つか)れさま」
 青年は帰りかけた足を止めると。「あの…。チーフは、怒(おこ)った顔より笑顔(えがお)のほうが素敵(すてき)だと思います。あっ、これは…、僕(ぼく)だけじゃなくて、みんな思ってますから」
<つぶやき>どんな仕事にも責任はつきものです。でも、たまには肩(かた)の力を抜(ぬ)きましょう。
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