明日から期末試験(きまつしけん)が始(はじ)まる。私は、あせっていた。私にとって今度の試験は――。なのに、私の頭(あたま)の中にいる別の私たちが耳元(みみもと)でささやき始めた。
「もう、いいんじゃないの? そんなにがんばらなくてもいいよ。良い点とれなくても、今まで通(どお)りで十分(じゅうぶん)じゃない」
「ダメよ。ここまでがんばったんだから。あと少し、まだ時間はあるわ」
「それより、明日に備(そな)えて早く寝(ね)た方がいいよ。嫌(きら)いなことをするのは身体(からだ)によくないわ」
「私はできる娘(こ)よ。ここで諦(あきら)めてどうするの。今までがんばってきたんじゃない」
「がんばってもさ、それがどうなるのよ。こんな勉強(べんきょう)、役(やく)に立つことあるのかしら」
「あるわよ、絶対(ぜったい)に役に立つから。ここが踏(ふ)んばりどころよ。あきらめちゃダメ」
「かったるいなぁ。もうやめてさ、夜遊(よあそ)びでもしようぜ。きっと楽しいわよ」
私は思わず叫(さけ)んだ。「うるさい、もういい加減(かげん)にしてよ! 出てって、私の中から…」
私は誰(だれ)かに肩(かた)を揺(ゆ)すられた。目を上げると、そこには妹(いもうと)がいて、
「お姉(ねえ)ちゃん、こんなとこで寝(ね)てると風邪(かぜ)ひいちゃうよ」
私は我(われ)に返って、「えっ…、私…、寝てた? ね、いつから? いつから寝てた?」
「そんなこと知らないわよ。でも、変な寝言(ねごと)いってたわよ。どんな夢(ゆめ)みてたの?」
私は机(つくえ)の上のノートに目をやり愕然(がくぜん)とした。まったく勉強がはかどっていなかった。
「ま、いいか…。こうなったら、出たとこ勝負(しょうぶ)で…。もう寝よ。うん、それがいいわ」
<つぶやき>本当にいいんですか? もう少しやっておいた方が良いと思うんだけど…。
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