みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0712「ゾンビ現る」

2019-11-11 18:32:04 | ブログ短編

「どうしたの? 遅(おそ)かったじゃない」マコは玄関(げんかん)を開けるなり言った。
 入って来たのは友だちの陽子(ようこ)。彼女が真っ青(さお)な顔をしているのに気づいたマコは、心配(しんぱい)そうに訊(き)いた。
「大丈夫(だいじょうぶ)? どこか具合(ぐあい)でも悪(わる)いの? もう、ふらついてるじゃない」
 陽子は、マコに支(ささ)えられるようにしてリビングにたどり着くと、その場にへたり込んだ。そして、マコの手をとってか細(ぼそ)い声で言った。「私、ゾンビになっちゃうみたい」
 マコは、一瞬(いっしゅん)、耳(みみ)を疑(うたが)った。ゾンビって…、まさか、あのゾンビ?
 陽子はたどたどしく話し始めた。「ここへ来る途中(とちゅう)でね、ゾンビが歩いてて…」
「なに言ってるのよ。ゾンビなんか、普通(ふつう)にいるわけないじゃない」
「それが、いたのよ。私、逃(に)げたのよ。でも、そいつ足が早(はや)くて…。腕(うで)、噛(か)まれちゃった」
 陽子は噛まれた所をマコに見せた。そこには、しっかりと歯形(はがた)が残(のこ)っている。陽子は、
「ねえ、お願(ねが)いがあるんだけど…。私と一緒(いっしょ)にゾンビになってくれない? 私たち、友だちでしょ? 私一人じゃ、心細(こころぼそ)くて…。マコと一緒(いっしょ)だったら、少しは…」
 マコは慌(あわ)てて陽子から離(はな)れると、「そんなの、イヤよ。何で、あたしがゾンビにならなくちゃいけないの? 冗談(じょうだん)じゃないわよ、絶対(ぜったい)、イヤ!」
 その時、玄関のドアを叩(たた)く音が響(ひび)いた。陽子は笑(え)みを浮(う)かべてささやいた。「来たわ」
<つぶやき>何が来たのかな? いくら友だちの頼(たの)みでも、こればっかりはイヤですよね。
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