みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0727「営業の人」

2019-11-26 18:18:50 | ブログ短編

 私の前に座(すわ)っている人。この人、私が勤(つと)めてる所で、最近取引(とりひき)を始めた会社の営業(えいぎょう)の人なんだけど――。どういうわけか、あちこちで顔を合わせることがあって…。それも、プライベートのとき。スーパーとか、行きつけのお店(みせ)、それに駅(えき)のホームとか…。まるで、私のことつけてるみたいに。今日だって、喫茶店(きっさてん)でお茶(ちゃ)してるとき声をかけられた。
 その人は、人なつっこい笑顔(えがお)で私の前の席(せき)にするりと座(すわ)り込んで、私にこう言ったの。
「よくお目にかかりますね。私、この辺(あた)りを営業(えいぎょう)で回っておりまして」
 私は〈あっちへ行ってよ〉とも言えなくて、「ああ、そうなんですか…」と答(こた)えた。
「これも何かの縁(えん)ですね。もし、何かお困(こま)りごとがありましたら何時(いつ)でもおっしゃって下さい。私共(わたくしども)では、企業(きぎょう)だけでなく個人(こじん)のご依頼(いらい)も承(うけたまわ)っておりますので」
 その人は名刺(めいし)を私に差(さ)し出して、「もちろん秘密厳守(ひみつげんしゅ)です。どんなことでもお引き受け致(いた)します。あ、でも法律(ほうりつ)に触(ふ)れることはお断(ことわ)りすることになりますが」
「ああ、そうですか…。でも、私は別に、そういうのは…」
「そうですか、それは何よりです。私共では、女性の方からのご依頼もけっこうありまして。もしものときはご連絡(れんらく)下さい。私共では、アフターサービスを重視(じゅうし)しておりまして、最後(さいご)まで責任(せきにん)を持ってやらせていただきます。きっとご満足(まんぞく)していただけると…」
 私は、その人に見つめられて、思わず言ってしまった。「実(じつ)は、私、困ってることが…」
<つぶやき>見つめるだけで仕事(しごと)を取るなんてすごいです。でも、何の営業なんでしょ?
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コメント
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