みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0714「穴」

2019-11-13 18:22:24 | ブログ短編

 いつもの散歩道(さんぽみち)を歩いていて、私は道路(どうろ)の真(ま)ん中に穴(あな)が開いているのを発見(はっけん)した。早朝(そうちょう)の時間で車はまったく走っていなかったので、私は穴のそばまで行ってみることにした。
 穴の直径(ちょっけい)は二十センチほどで、中を覗(のぞ)いてみても底(そこ)がまったく見えない。どれだけ深(ふか)いんだろう? 私は確(たし)かめてみたい衝動(しょうどう)にかられた。試(ため)しに手を入れてみた。何も触(ふ)れるものはなかった。少しずつ肘(ひじ)まで入れてみる。それでもダメだった。
 こうなったら…、私は道路に寝(ね)そべって腕(うで)の付け根(ね)まで入れてみた。それでも穴の底にはとどかない。そんなに深いのか? これは警察(けいさつ)に知らせないと――。
 そう思った私は、腕を穴から抜(ぬ)こうとした。だが、どういうわけか腕がまったく動かない。いくら抜こうとしても、何かに掴(つか)まれているみたいにびくともしないのだ。私はあせった。今、私は道路の真ん中に横(よこ)になっているのだ。もし、車が走ってきたら…。
 私は必死(ひっし)になって腕を持ち上げた。何かに挟(はさ)まれているはずはないのだ。腕に何かが触(ふ)れている感触(かんしょく)はなかった。これは、どういうことだ! 抜けないなんて…。
 そんな時だ。私は更(さら)なる危険(きけん)に気がついた。穴が、少しずつ広がっているのだ。ボロボロと穴のふちが下に落ちていく。最初(さいしょ)は二十センチだったのに、今みると三十センチ以上(いじょう)になっていた。このままでは、穴の中へ落ちるのも時間の問題(もんだい)だ。もし落ちたらどうなるんだろう。死(し)んでしまうのか、それとも…。私の中に別の衝動がわき上がってきた。
<つぶやき>危険(きけん)なことはしないようにしましょ。でも、穴の中には何があるんでしょう?
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