みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0717「月の話?」

2019-11-16 18:18:01 | ブログ短編

「今夜(こんや)は…、月がきれいですね」男は女と一緒(いっしょ)に歩きながら夜の空を見上げて言った。
 女は夜空を見上げるが、どこにも月が見当(みあ)たらない。女は男に言った。
「どこにも出てないじゃありませんか。からかわないで下さい」
「別にからかったつもりは…。ですから、<月がきれいですね>って言ってるんです」
 女は首(くび)をかしげながら、また空を見上げる。やっぱり月は見えない。
 女は、「あなたが何を言おうとしているのか分かりません。あたし理系(りけい)なんで、もっと分かるように言って下さい」
 男は一瞬(いっしゅん)戸惑(とまど)いの表情(ひょうじょう)を浮(う)かべたが、意(い)を決したように女を見つめて言った。
「分かりました。確(たし)かに、あなたは理系女子。あなたに分かるようにお話しします」
「はい、お願いします」女は微笑(ほほえ)みを浮かべて、男の方をじっと見つめる。
 これは、男にとってはかなりのプレッシャーだ。でも、ここまで来たら、やるしかない。
「ぼ、僕(ぼく)は…、つまり…、き、きみの…、きみを…、だから…つまり…」
 男は、喉(のど)の奥(おく)まで出かかっていた言葉(ことば)を飲(の)み込んでしまった。代わりに出て来たのは、
「月の話しは、また今度にしましょう。月が出ているときにでも…」
「そうですか…。じゃあ、あたしからも言っていいですか?」
「は、はい。どうぞ…」男は、女に釘付(くぎづ)けになっていた。
「あたしも…、今夜の月は、きれいだと思います」
<つぶやき>もしかしたら脈(みゃく)ありなの? それとも、本当に月の話しをしているだけか…。
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