みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0719「かます」

2019-11-18 18:26:45 | ブログ短編

「なに、話って?」彼は会社(かいしゃ)のロビーで待っていた好子(よしこ)に言った。
 好子はもじもじしながら、「あの、あたし…、ずっと思ってたことが…」
「ごめん、その話、長くなるかな? これから課長(かちょう)と一緒(いっしょ)に出なくちゃいけなくなって…。わるいんだけど、戻(もど)ってからでもいいかな?」
「ああ、もちろん…。あたしの方は別に急(いそ)がないし――」
 彼が彼女から離(はな)れて行くと、もの陰(かげ)に隠(かく)れていた真希(まき)が駆(か)け寄ってきて言った。
「もう、なにやってんのよ。せっかく呼(よ)び出してあげたのに」
「だって、急(いそ)いでるみたいだったし…。それに、こういうことは…、あたし…」
「あーぁ、なに難(むずか)しく考えてんのよ。<好きです>って言うのに五秒もかからないでしょ」
「そりゃ、そうだけど…。あたしには、そういうのムリだよ」
「まったく、あんたは中学生か? そんなんだから男ができないんだよ。いい、好きな男だと思うからいけないの。目の前にあるのは壁(かべ)よ。デッカイ壁だと思えば何でも言えるでしょ。そんで、一発(いっぱつ)ぶちかますつもりで言ってやりなさい。簡単(かんたん)なことでしょ」
「えーっ、それは、ちょっと…。あたしには、思えないかも…」
「はぁ? わたし、イヤなの。白黒(しろくろ)はっきりしないのって我慢(がまん)できない。行くわよ。彼が戻(もど)ってくるまでに、きっちり稽古(けいこ)しなきゃ。そんで、今日中に決着(けっちゃく)つけるからね」
<つぶやき>告白(こくはく)はかますものでは…。でも、ウジウジしてても何も始まりませんけどね。
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