みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

0715「しずく58~別の顔」

2019-11-14 18:30:49 | ブログ連載~しずく

 あずみたちが帰った後、千鶴(ちづる)はしずくが寝かされている部屋にいた。じっとしずくの顔を見つめていた千鶴は、ささやくように呟(つぶや)いた。
「この娘(こ)が、本当(ほんとう)に救世主(きゅうせいしゅ)になるのかしら…。もしそうだとしたら…。――この娘(こ)が神から選(えら)ばれた者(もの)なら、私が何をしても変えることなんかできないわよね。そうでしょ?」
 千鶴は、小さなため息(いき)をつくと部屋を出た。ちょうどその時、インテリアとして飾(かざ)られていた古(ふる)い電話(でんわ)が鳴(な)り出した。千鶴は静(しず)かに受話器(じゅわき)を取ると耳(みみ)に当(あ)てた。受話器の向こうからは、男の低い声が響(ひび)いてきた。
「予定通(よていどお)りに進(すす)んでいるな。こちらから迎(むか)えを送(おく)る。準備(じゅんび)しておけ」
 千鶴は感情(かんじょう)のない声で答えた。「その必要(ひつよう)はないです。意識(いしき)が戻(もど)らないの、もう私たちの脅威(きょうい)にはならないでしょう。このままここに置いて、様子(ようす)を見た方がいいと思います」
「もしその人間が脅威になりうる能力(ちから)を持っているなら、我々(われわれ)が管理(かんり)しなければならない」
「しかし、ここから動かせば気づかれてしまいます。そうなったら…」
「なるほど。ならばしばらく様子をみよう。もし意識が戻ったらすぐに知らせるんだ。君(きみ)には本当に感謝(かんしゃ)している。捜(さが)し物をするのに、君の能力は大(おお)いに役(やく)に立っている」
「約束(やくそく)は、ちゃんと守(まも)って下さい。ここには手を出さないと」
「もちろんだとも。そこは聖地(せいち)だ。君が裏切(うらぎ)らない限(かぎ)りね」
<つぶやき>電話の相手(あいて)は誰(だれ)なのでしょう。千鶴は敵(てき)になってしまうのか、それとも…。
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