人間(にんげん)にとって電気(でんき)は必要不可欠(ひつようふかけつ)なものになっていた。巨大工場群(きょだいこうじょうぐん)は大量(たいりょう)の電気を消費(しょうひ)して様々(さまざま)な物を作り出し、家庭(かてい)でも快適(かいてき)さを追求(ついきゅう)するあまり電気の消費量が増(ふ)え続けた。
人間たちはこんな時代(じだい)がずっと続くと思っていた。その終焉(しゅうえん)が近づいていると分かっていても、それを止(や)めようとはしなかった。そして、その時はやって来た。環境(かんきょう)の激変(げきへん)をきっかけに、電気代が高騰(こうとう)したのだ。すると、電気の奪(うば)い合いが始まった。
電気網(もう)は遮断(しゃだん)され、一部の者たちが電気を独占(どくせん)するようになった。電気は、庶民(しょみん)には手のとどかないものとなった。そして、電気に頼(たよ)ることを止めてしまった人達も――。
それから100年後。電気のない生活(せいかつ)が当たり前になっていた。人々は薪(まき)を割(わ)り、かまどで煮炊(にた)きをしていた。日の出とともに起き出して、暗くなれば眠(ねむ)りにつく。人々の生活リズムは穏(おだ)やかになり、平和な世界になったと思いきや――。
人間たちの新たな闘争(とうそう)が始まった。今度は、森林(しんりん)の伐採(ばっさい)が始まったのだ。薪の需要(じゅよう)が増えたからなのだが、植林(しょくりん)してもそのスピードには追(お)いつけなかった。禿(は)げ山が広がると、生態系(せいたいけい)は破壊(はかい)され、土砂崩(とじゃくず)れなどの災害(さいがい)も頻発(ひんぱつ)した。
それから100年後。人間はその数を激減(げきげん)させていた。今度は、自然(しぜん)が人間の支配者(しはいしゃ)になったかに見えたのだが――。また人間たちの新たな闘争が始まろうとしている。
<つぶやき>人間の知恵(ちえ)は欲望(よくぼう)になり、そして破壊を繰(く)り返す。人間とは何でしょうね。
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