長い通路(つうろ)を歩いて行く初音(はつね)と涼(りょう)。通路には照明器具(しょうめいきぐ)がないのに、天井(てんじょう)からまるで木漏(こも)れ日のような光が射(さ)し込んでいる。しばらく行くと、突然(とつぜん)、扉(とびら)が現れた。
音も無(な)く扉が開くと、ハルとアキの姉妹(しまい)が飛(と)び出してきた。アキは初音の顔に傷(きず)があるのを見つけると、初音の腕(うで)を抱(だ)きかかえて言った。
「大丈夫(だいじょうぶ)よ。あたしに任(まか)せて。これくらい何でもないわ。きれいに治(なお)してあげるね」
アキは有無(うむ)も言わせず、初音を扉の中へ連れて行ってしまった。ハルは、
「ちょっと、待ちなさいってば…。もう、張(は)り切りすぎよ。あっ、お姉(ねえ)さんは大丈夫?」
涼は、ちょっとまごつきながら、「ああ、大丈夫よ。これくらい、平気(へいき)だから…」
「じゃあ、行きましょ。食事(しょくじ)の準備(じゅんび)もできてるわ。それに…」
「私は…。いるんでしょ? 両親(りょうしん)に、会いたいんだけど…」
「分かったわ。じゃあ、ついて来て」
ハルの案内(あんない)で涼は別の扉へ入って行った。その部屋(へや)はほのかな灯(あか)りに包(つつ)まれていた。そこに両親が寝(ね)かされていた。涼は二人に駆(か)け寄って、声をかけた。だが、二人とも眠(ねむ)っているのか、何の反応(はんのう)もしなかった。涼はハルに、
「ねぇ、大丈夫よね。死(し)んだりしないよね。……私のせいだ。私が…いたから…」
「それは違(ちが)うわよ」暗(くら)がりの中から声がした。暗がりから現れたのはしずくだった。
涼は、彼女を見て言った。「あなた…、誰(だれ)なの?」
<つぶやき>涼はしずくの記憶(きおく)を消されたまま…。確(たし)か、そうだったと記憶してますが…。
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