「ねぇ、あなた…」妻(つま)が意味深(いみしん)に声をかけてきた。
今までの経験(けいけん)から、これは何かあるなと僕(ぼく)は思った。付き合い始めた頃(ころ)から、いや、付き合う前から妻の性格(せいかく)は変わっていないのだろう。妻は、自分(じぶん)のことは自分で決(き)めないと気がすまないようだ。それに、誰(だれ)が何と言おうと、自分で決めたことは曲(ま)げようとしない。とっても頑固(がんこ)なところがある。
思えば、僕が告白(こくはく)しようとしたときも、プロポーズのときもそうだ。僕が言い出す前に、妻が先手(せんて)を打(う)ってきた。僕がその決意(けつい)をするのに何日もかかっているのに、妻はお構(かま)いなしだ。でも、妻は決して気づかいのできない人ではない。これは言っておかなくては…。
妻は微笑(ほほえ)みながら、「今日は休(やす)みでしょ。一緒(いっしょ)に出かけない?」
そんなことを言ってくるのは、何か久(ひさ)しぶりって感じだ。でも、これは夫婦関係(ふうふかんけい)が冷(ひ)えきっているとかじゃない。僕たちは、一人でいる時間も大切(たいせつ)にしようと話し合っていた。
僕は、「ああ…。もちろん、いいけど…。で…、どこへ行くんだい?」
妻は僕の返事(へんじ)を待ってはくれない。妻が口にしたことに変更(へんこう)はないのだ。妻は僕の質問(しつもん)など耳(みみ)に入らないようだ。すでに、そそくさと鏡(かがみ)の前に座(すわ)っていた。僕はいつものことながら、妻の行動の早さに感心するばかり…。
さて、今日は何が起(お)こるのか…。ドキドキの休日が始まった。
<つぶやき>やっぱり、何年たっても夫婦にはドキドキが必要(ひつよう)なんじゃないでしょうか?
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