みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1013「アイテム」

2021-01-11 18:08:41 | ブログ短編

 彼女は高性能(こうせいのう)の腕時計型端末(うでどけいがたたんまつ)を通販(つうはん)で購入(こうにゅう)した。バイトのお金をすべてつぎ込んだけど、それだけの価値(かち)はあると確信(かくしん)していた。まずは明日からの期末試験(きまつしけん)の勉強(べんきょう)に使うことにした。自動暗記機能(じどうあんききのう)で学年(がくねん)と科目(かもく)を選択(せんたく)して、あとは端末を腕にはめて眠れば完璧(かんぺき)のはず。
 翌日(よくじつ)、彼女はスッキリした顔で登校(とうこう)した。団地(だんち)の前を通っているとき、彼女の頭をめがけて植木鉢(うえきばち)が落(お)ちて来た。瞬時(しゅんじ)に端末のアラームが鳴(な)り、防衛機能(ぼうえいきのう)が作動(さどう)した。植木鉢は頭の上ではね返(かえ)り、彼女の足元(あしもと)に落下(らっか)した。彼女は端末を見て、
「すごいわ、こんな機能もついてるのね。でも、こんなに課金(かきん)されるなんて…」
 校門(こうもん)を通って校舎(こうしゃ)へ向かう途中(とちゅう)、クラブの顧問(こもん)の先生を見かけた。昨日(きのう)、クラブを無断(むだん)で休んでいたので、彼女は端末の透明(とうめい)シールド機能を作動させた。これを使えば、先生に見つかることはないはずだ。彼女は余裕(よゆう)で先生の前を通り過(す)ぎた。
 今日の試験はまあまあの手応(てごた)えだった。家に帰っても勉強をしなくていいので、彼女は誰(だれ)もいない体育館(たいいくかん)で遊(あそ)んでいくことにした。バスケのシュートをしているとき、誰かが体育館に入って来た。彼女は、透明シールド機能を使って、備品庫(びひんこ)に隠(かく)れることにした。入って来たのは先生で、誰もいない備品庫に鍵(かぎ)をかけた。彼女は、閉(と)じ込められてしまった。
「もう、どうするのよ。そうだ。ロック解除(かいじょ)機能があったわ。これを使えば…」
 だが、端末に〈支払限度額(しはらいげんどがく)をこえています〉と表示(ひょうじ)されて、使えなくなっていた。
<つぶやき>便利(べんり)なのはいいのですが…。ここは、スマホで誰かに助けを求めましょう。
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コメント
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