みけの物語カフェ ブログ版

いろんなお話を綴っています。短いお話なのですぐに読めちゃいます。お暇なときにでも、お立ち寄りください。

1018「寝言」

2021-01-21 17:54:05 | ブログ短編

 どうやら彼は、寝(ね)ている間に寝言(ねごと)を言ってしまったようだ。それも、女性の名前(なまえ)を――。
 そのせいか、彼の妻(つま)は朝からご機嫌(きげん)ななめのようだ。彼は妻をなだめるように、
「ごめん、悪(わる)かったよ。でもね、寝言だから…。そんな女性(ひと)、ほんとに知らないんだ」
 妻は不満(ふまん)そうに、「でも、その女性(ひと)の夢(ゆめ)を見たんでしょ? あたしじゃなくて…」
「だから、どんな夢を見たかなんて覚(おぼ)えてなよ。それに、僕(ぼく)が愛(あい)してるのは君(きみ)だけだ」
 妻は、愛していると言われて満足(まんぞく)したのか、
「分かったわ。許(ゆる)してあげる。その代わり、あたし欲(ほ)しいものがあるのよねぇ」
「いいよ。でも、あんまり無駄遣(むだつか)いするなよ」
「大丈夫(だいじょうぶ)よ、心配(しんぱい)しなくても。これでもあたし、やりくり上手(じょうず)なんだから」
 妻は上機嫌(じょうきげん)で朝食の支度(したく)を始めた。彼はそんな彼女を見ながら呟(つぶや)いた。
「ほんと、単純(たんじゅん)だよなぁ。ばれるかと思ったけど…」
 妻は包丁(ほうちょう)を持ちながら呟いた。「ほんと単純。あたしが気づかないわけないでしょ」
 妻はまな板(いた)の上のネギを包丁でぶった切った。
 彼が出かけるとき、妻は、「ねぇ、今日は早く帰って来られるの?」
「ああ、今日は…。取引先(とりひきさき)へ行かないと行けないから、遅(おそ)くなると思うよ」
「そう。じゃぁ、気をつけてね。行ってらっしゃい」
<つぶやき>妻の勘(かん)は鋭(するど)いです。この後、どうなっちゃうのか…。浮気現場(うわきげんば)に現れるかも。
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